「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    東京・車保有で1515円/連合/リビングウェイジを改定

     連合は9月28日、最低賃金改定審議などで最賃引き上げを主張する際などに用いる「連合リビングウェイジ」を改定した。地方では自動車が生活必需品であることから、自動車を必要経費とする最低生計費試算結果を前面に打ち出しているのが特徴だ。その場合、東京では時給1515円が必要になると試算している(表)。

     リビングウェイジは、健康で文化的な生活を送れる最低限必要な時給の理論値。衣食住をはじめ、教育や娯楽、交通、医療など必要な費用を積み上げる「マーケットバスケット方式」で試算する。さいたま市で実際に調査し、その結果から、物価指数などに応じて各都道府県の金額をはじき出している。

     改定は2017年以来4年ぶり。自動車を保有しない場合の試算額は、最も高い東京が時給1190円(前回1120円)で、最も低い宮崎と鹿児島が950円(ともに同900円)となった。

     これまでも、自動車を保有する場合の試算を行っていたが、あくまで参考値として強調してこなかった。しかし、公共交通機関の発達していない地方・地域にとっては「生活必需品」という実感が強く、今回の改定から、各都道府県の従来のリビングウェイジに並べて示している。

     自動車を保有する場合のリビングウェイジは東京が1515円で神奈川が1461円、埼玉1388円。最も低い宮崎、鹿児島でも1255円となる。

     ただ、地方ほど家賃が低いため、さいたま市と比較した「住居の物価指数」も併記。どの指標に重点を置くかは、各地方連合会に委ねるとしている。

     

    ●専業主婦モデルを転換

     

     21年改定では有識者を招き、試算方法の妥当性を検証した。基本的な試算方法の変更はなかったが、2人以上世帯の試算で、「専業主婦」を想定していた成人女性のモデルを「勤労者」に改めている。

     そのため、これまで主婦が弁当を作ると想定し、ゼロ円としていた昼食費を1人1万円で計上。単身者も同様に加算した。

     一人親世帯については、母子家庭だと児童扶養手当が収入に加算されるため、前回まであえて「父と子」のモデル世帯としてきたが、改定では性別を問わない設定とした。

     冨田珠代総合労働局長は「一人親でも男性と女性とでは、女性の方が化粧品代など身だしなみの費用がかかり、最低生計費は高くなる。とはいえ、最低賃金近傍で働いているのは、多くが女性。リビングウェイジの目的からすれば実態に目を向けるべき」と話す。

     改定に際し5~6月にはウェブ上で意見を募った。約300人が意見を寄せた結果、外食やレジャー、成人と高校生の小遣いについて「少なすぎる」との声が寄せられ、上方修正している。

     連合のリビングウェイジは底上げ・底支えの取り組みの中軸となる。「最賃千円時代」の新たな指標として今後の活用が注目される。

     

    〈写真〉全国の最低賃金額を、「ユニオニオンくん」のイラスト付きで紹介するクリアファイルを4千部作製。構成組織や地方連合会におろすとともに、街頭でも配り、最賃引き上げへの世論を高めたい考えだ。