核兵器廃絶日本NGO連絡会は8月5日、広島市内で討論会を開き、核兵器禁止条約と核抑止論について主要政党の国会議員がコメントした。日本政府が条約を批准しなくても、締約国会議にオブザーバー参加すべきとの意見が、参加した与野党の国会議員からいっせいに示された。
核抑止論とは、核兵器戦力を持つことで国家間の核戦争を防ぐという考え方。核不拡散条約(NPT)はこの考え方を認めている。一方、核保有国はインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮にも拡大し、条約の義務である核軍縮は進んでいない。
1月に発効した核兵器禁止条約は、核兵器の開発、使用、使用による威嚇など全てを違法とする条約。日本が核兵器禁止条約を批准するには、米国の「核の傘」依存政策から脱却する方針転換が必要だ。
自民党の寺田稔衆院議員(党被爆者救済と核兵器廃絶推進議連代表世話人)は「軍事分野の技術革新により、飛来する核兵器に対して衛星コンステレーション(複数の人工衛星による観測体制)で早期に探知、無力化する、いわゆるシールド防衛の技術が現実化しつつある。核兵器に対して核を持たなくても日本を防衛できる」と述べた。日米安保条約には核兵器に関する規定がなく、安全保障政策は安保条約を基軸としながら、「核の傘」からの脱却は可能と主張している。
共産党委員長の志位和夫衆院議員は「核抑止力は『いざという時に核兵器使用をためらわない』という姿勢が前提となる。被爆体験を持つ日本がそれでいいのか。安保条約に反対だが、核抑止力から脱却すれば安保条約下でも禁止条約を批准できる」と話した。
社民党党首の福島瑞穂参院議員は「核抑止論に立つ限り核廃絶は実現できない。核抑止依存のリスクの議論を深めなければならない」と語った。
一方、国民民主党代表の玉木雄一郎衆院議員は「核抑止力をどう考えるかが大きな問題。それなくしてわが国を守れるのか。国会に委員会を設けて議論する必要がある」と発言。立憲民主党代表の枝野幸男衆院議員は「批准国と未批准国を分けるのは核抑止力への評価の違いだ。日本が両者を橋渡しするのは当然」と、明確な態度表明を避けた。
国連の中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)は「国際的な安全保障の環境は激変している。軍縮、核不拡散の分野で新しいビジョンを構築する転換期にある」と議論を歓迎した。
●政府にオブ参加求める
禁止条約の早期批准を求めたのは、共産、社民、れいわ。公明は中長期で求める。自民党は議連としての発言。禁止条約については政党間で意見の違いがある中、菅首相は締約国会議へのオブザーバー参加にも慎重な姿勢を示している。討論会では、オブザーバー参加について、維新を含む参加した与野党の国会議員全員が「参加すべき」と積極的関与を求めた。
締約国会議の議長候補であるアレクサンダー・クメント大使は「被爆者は禁止条約制定に大きな役割を果たした。日本も参加し歴史的役割を果たしてほしい」と未批准国の参加も歓迎すると述べた。
日本被団協の児玉三智子事務局次長は「全員がオブ参加への賛同を表明し、うれしい。(さらに言えば)禁止条約を批准して参加してほしい。私たちは核兵器廃絶の道筋をどうしても見たい」と強く訴えた。
〈写真〉討論会は広島市内の会場とオンラインの併用で開催。川崎哲共同代表(ICAN国際運営委員)が司会を務めた(8月5日)
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