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    沖縄レポート/政権による差別、一層露骨に/振興計画で「知事外し」の冷遇

     琉球王国は、明治政府によって強引に日本に組み入れられ、1879年に沖縄県になった。1945年の沖縄戦の後、米国による統治が27年続き、72年に施政権が日本に返還され、沖縄県が復活する。一般に「本土復帰」と呼ばれているが、「本土」に復帰するとは言葉としておかしいとして、沖縄の新聞は「日本復帰」とか「施政権返還」と表現している。

     さて、来年はこの「日本復帰」から50年である。大きな節目を前に沖縄は大問題を抱えている。「沖縄振興計画」問題である。地元紙の見出しでは「振計」と略される。

     

    ●10年ごとの沖縄振興計画

     

     沖縄戦で甚大な被害を受け、多くの人材を失った沖縄は、軍事優先の米統治下の時期に社会経済面で他府県と比べて大きな格差が生じた。そこで政府は沖縄振興開発計画を策定し、復帰の年から10年ごとに更新して実施してきた。2002年からの第4次は「開発」がない「沖縄振興計画」となり、計画策定の主体が沖縄県になった。

     その第5次計画が今年度で期限切れとなる。その先をどうするかは、玉城デニー知事にとって最大の課題だった。しかし、これまで発信は乏しく、6月初めにようやく素案を公表した。

     琉球新報は社説(6月4日付)で「はやりの経済施策の数々が並ぶ一方で、独自のビジョンや構想力が薄れた印象は否めない。肝心の沖縄県自身が何をしたいのかという軸が見えないのであれば、沖縄振興を継続させる必要があるのか問われても仕方がない」と厳しく指摘した。

     何しろ次期計画は来年4月にスタートする。今は大詰めの段階である。そこへ政権による玉城知事への露骨な冷遇という問題が露見した。

     

    ●菅首相、知事に会わず

     

     自民党は政務調査会の下に沖縄振興調査会(小渕優子会長)を設けており、現在、沖縄振興計画に関して党本部に提言する準備を進めている。玉城知事は7月15日に上京して河野太郎沖縄北方担当相に素案を手渡したが、菅首相には会えず、自民党の調査会に要請する場も持てなかった。

     調査会の方は、政権寄りの市長や経済界からオンラインも含め意見聴取しているのに、計画の主体である知事からの聴取は見送り、意見聴取を打ち切った。

     沖縄タイムスは19日付で「新振計での要請行動/知事、首相らに面会できず/交渉役不在 保守系首長は厚遇」という見出しの記事で、「知事の『本気度』を疑問視する声が上がっている」と指摘した。

     琉球新報は21日付で「自民沖振調査会 県説明省く/透ける露骨な『知事外し』/党本部提言へ 求心力低下狙いか」と報じた。どちらも、知事の弱腰と政権の傲慢(ごうまん)さを明らかにしている。

     基地問題で政府に盾突く沖縄県を、経済政策で揺さぶり、屈服させようというのは、これまでの自公政権が陰に陽に行ってきたことだが、今回は非常に露骨である。

     政権の沖縄差別政策は、いよいよ遠慮のないものになっている。(ジャーナリスト 米倉外昭)