全教は7月21日、教員免許更新制の廃止を求める署名約3万5千筆を文部科学省に提出した。公立・私立の小・中・高・特別支援学校の教職員、管理職から集めた「私のひとこと」には、教員への負担が重い半面、効果が薄いことや、教員不足に拍車をかけている実情が浮かぶ。
教員免許の更新制は、第1次安倍政権下で法制化され、2009年度に始まった。10年ごとの更新で、5日間で30時間の講習、自己負担3万円が必要となる。萩生田光一文部科学相は3月、更新制について抜本的な見直しを諮問した。
全教が集めた「私のひとこと」には、教員免許更新制への不安や不満の声が並ぶ。
受講の負担について「毎日20時を過ぎた頃にようやく明日の授業の準備が終わり、そこから免許更新のための勉強をさらに1時間しなければならない生活が2カ月続きました。想像以上のつらさでした」。ただでさえ忙しい通常勤務にさらに上乗せされる苦痛を訴えている。
別の教員は「コロナの影響で講習を予約するだけでも一苦労。部活動、授業を含めた普段の業務に支障が出ている」と記した。
早期リタイヤを促す「効果」も。「50代で更新講習を受けましたが、受講費のほかに交通費、昼食代も合わせると負担が大きく、体力的に厳しかった。次の更新時はあきらめざるを得ません。免許更新が教職をあきらめるきっかけになってしまうのは私だけではないと思う」とつづった。
●実のある研修に
免許の失効が教員不足に拍車をかけているという指摘も少なくない。子どもの教育にも直結する問題だ。「免許を失効してしまった方が多すぎて、お休みをとる先生方の代替が見つかりません」「残った教員が過重負担でまた倒れるという悪循環に陥っています」
無理をしてまでも受けなければならない更新時の講習が、効果があるのか。教員の資質向上は必要との考えを示すある教員は、「現行制度では結局、教員免許状を人質に、全く別の科目の研修を受講せざるを得ないこともあり、本当の効果を感じません」と指摘。別の教員は「教員の時間的余裕を確保し、自主的な研究ができるようにしてほしい」と語っている。
全教は教員免許更新制の廃止と、免許状の有効期限の撤廃を要求。強制ではなく、「研修と修養」を権利として自主的・自発的に行える研修のあり方に見直すとともに、少人数学級の実現や長時間過密労働の解消を求めている。
糀谷陽子中央執行委員は「子どものため、よりよい教師となるために、実のある学びの場となり、創意工夫ある研修となるよう求めていく」と話している。
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