日本医労連は7月20、21の両日、東京都内の会場とオンラインの併用で定期大会を開き、医療体制の抜本的な拡充・強化のために政治の転換を求める方針を決めた。医療・介護・保健所の削減をやめるよう訴える「緊急行動」に取り組み、来年の診療報酬改定に向けて大幅増員への大きな流れをつくろうと呼びかけている。コロナ禍の中でも組織拡大を追求し、17万人を維持。「早期に18万人、20万人医労連を目指そう」と確認し合った。
森田しのぶ委員長はあいさつで「医療削減政策の中でコロナ禍になり、本来救える命を救うことができなかった。感染拡大が長期化し、医療従事者の心身の疲弊は極限に達している」と指摘。現場の実態をSNSなどで告発し、今までになく支援の輪が広がったが、政府は削減政策を変えようとしないと批判した。医療体制の抜本的な拡充強化のために、今秋行われる総選挙で、政治を根底から変えようと訴えた。
方針提起した森田進書記長は「新入職員の説明会を開くことが難しい中、知恵を出し合いながら組織拡大を追求してきた。労働組合があったからこそ、補助金や交付金の創設などで政府や自治体を動かすことができた。医療機関の減収、赤字が続く中、個別の労使交渉だけで現状を打開するのは難しい。労働組合をさらに大きくする必要がある」と強調した。
●医療削減に反対
討論では、全日赤の代議員が、新型コロナ禍の対応を迫られる中、成果主義賃金制度の導入を経営側から提案されていることを報告した。勤務評定によって昇給や昇格が決められる制度は、チームでケアを行う、医療や福祉の現場にはなじまないと訴えた。「コロナ禍で混乱している職場がさらに混乱を極める。署名を集めて本社の考えを変えさせたい」と語った。
住民とともに地域医療を守る運動も報告された。医師不足により県立釜石病院の一部の診療が制限され、10月からは産婦人科の一部の診療を休止するという報道を受け、住民が県立病院を守る運動をスタート。1カ月で1万6千筆の署名を集め県に提出した。岩手医労連は「東日本大震災を生き延びた人たちが今も医療で悩まされている。政治を動かす運動が必要」と述べた。
宮城県医労連は新型コロナ禍でも病院の統廃合計画が進められていると報告。「統廃合リストとして名指しされた病院以外でも統廃合計画が浮上している。多くの医療従事者、地域経済への影響も大きい。計画を阻止したい」と話した。
●「野戦病院のよう」
新型コロナ禍で医療が逼迫(ひっぱく)する実態も報告された。愛知県医労連の加盟労組のある特養老人ホーム2カ所で、クラスターが発生し収束するまでに2カ月かかったという。「利用者、職員、派遣職員と次々と感染症にかかる、壮絶な日々。医療機関が逼迫しているため、入院が必要な利用者を受け入れてもらえず、野戦病院のようで地獄だった」と話した。
広島県医労連は、ワクチン接種を休み返上で対応しており、今でも現場は過密過重労働だと訴えた。代議員は「現場には『欲しがりません、勝つまでは』のような空気感がある」と、ぎりぎりの状態にあることを告発した。
大会では佐々木悦子委員長(全医労)が新たに選任され、森田進書記長が再任された。
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