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    〈北九州市議会の意見書採択〉上/全国一律最賃/自民党市議が委員会で賛同/世論の変化を反映したか

     北九州市議会は6月16日、最低賃金の段階的な全国一律制度の導入を求める意見書を賛成多数で採択した。政令指定都市での採択は異例。実現の決め手となったのは、自民党市議の賛同だった。最賃をめぐる最近の世論の変化が反映しているとみられる。

     

    ●「全国一律」と明記

     

     今年3月、連合と全労協の地域労組でつくる北九州共闘センターが中心となって、最賃の全国一律化を求める意見書を国に提出するよう、北九州市議会に陳情した。4月22日に開かれた経済港湾委員会で、共闘センターの竹内俊一議長が提案の趣旨を説明した。

     追加資料として提出したのが、全労連が22都道府県で取り組んだ最低生計費試算調査結果と、監修した中澤秀一静岡県立大学短期大学部准教授の論文、自民党最低賃金一元化推進議員連盟の「緊急提言」(昨年6月発表)だった。

     質疑の中で自民党市議から「最賃は(全国)同一であるべき」という意見が出され、委員会では全会一致で採択。6月16日の本会議で日本維新の会を除く賛成多数で採択した。

     最賃の「全国一律の実施」を求める意見書は政令指定都市では異例だ。

     

    ●目安全協をにらんで

     

     経済港湾委員会で「全国一元化」を主張した日野雄二市議(自民の会)に話を聞いた。

     「(コロナ禍の)いま、率先して格差をなくさないといけない。最賃の一元化は九州地方選出の衛藤征士郎衆院議員(自民党最賃議連会長)や山本幸三衆院議員(同幹事長)も言っている。最賃議連の活動を党本部にも確認した。(最賃を引き上げると)『中小企業は成り立たない』という意見があるが、それは言い訳でしかない。以前からそういう主張をしている」

     一方、共闘センターの竹内議長は「自民党市議から賛同意見が出たことには驚いた。今年も採択は難しいかと思っていた」と振り返る。直前に日野市議に要請した時の印象と、委員会での発言内容が違うものだったからだ。竹内議長は賛同を得るために要請後も最賃議連の主張などを掲載した資料を届けたという。

     自民党の市議が「全国一元化」を公然と主張し、意見書採択までこぎつけた意義は大きい。地域間格差の弊害を訴える最賃議連や労組の主張が徐々に浸透してきたことの反映と言えるのではないか。

     今回の提案は、中央最賃審議会で5年に1度開かれる「目安に関する全員協議会」で最賃改定の運用見直しが検討される時期をにらんだ取り組み。同議長は6月議会で何としても意見書採択を実現させたかったと話す。(つづく)

     

    〈写真〉北九州共闘センターの竹内議長(左)と自治労・全国一般福岡地本の山岡委員長(右)