東京都江戸川区で6月22日、賃金の下限を定める公契約条例が制定された。この日、公共調達基本条例の改正案が全会一致で成立した。全国で25例目、都内では11例目。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の理念に沿う制度であると打ち出し、低入札競争に歯止めをかけ、事業者と働く者、住民にとってよりよい仕組みとなるとして、関係者の合意を得た。10月に施行する。
斎藤猛区長は昨年9月、自民、公明の与党会派の質問に「SDGsの目標達成にもつながる部分もある。公契約条例をつくっていきたい」と答弁。12月には既存の公共調達基本条例の改正案骨子を示し、意見を公募していた。
条例は、区が発注する仕事を請け負う事業者、下請けで働く労働者や一人親方について、賃金や報酬の下限を定める。下限の基準は国の公共工事設計労務単価や、会計年度任用職員の給与などをもとに、今後設置する審議会で決める。
対象となる範囲は(1)予定価格が1億8千万円以上の建設工事(2)同4千万円以上の業務委託契約(3)指定管理協定――とした。
下請け企業で賃金・報酬が下限を下回る違反があった場合、区と契約する受注企業に連帯責任を負わせる規定や、労働者による申し出権の確保、申し出たことによる不利益取り扱いの禁止、区による立ち入り調査と、契約解除などの是正措置や損害賠償も定めた。
同区では2010年に公正競争の確保などを目指す公共調達基本条例を策定した。コロナ禍で苦境にあえぐ地元業者は多く、東京五輪後の景気減速への不安は大きい。下請け単価の切り下げを防止し、適正な賃金を確保する、持続可能な仕組みが必要だとして、賃金条項を定める公契約条例への移行に踏み切った。
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