新型コロナ禍で大打撃を受けている交通・観光産業の三つの連合加盟産別が、産業の危機を訴え、政府と関係省庁に支援を要請している。感染が一定収束した後、旅行など移動への国の助成を求めている。
3産別は、JR連合、ホテルや観光産業のサービス連合、日航や全日空などの航空連合。組合員は合わせて18万人に上る。共同の要請行動は初めてで、6月11日に都内で会見を行った。
要請の一つは「移動需要の創出と回復につながる助成制度の構築」。ワクチン接種により感染が一定収束した段階でのことだ。政府の「GoToトラベルキャンペーン」のような一過性の支援ではなく、安全対策を備えた、人々の移動への長期間の国の助成を求めている。具体策として(1)移動前の抗原検査と国による費用補助(2)出張や、宿泊を伴わない移動も補助対象に(3)期間が長く簡易な制度――などを掲げた。
もう一つの要望が「広域の移動や観光に対する不安意識の払しょく」。広域移動と観光が感染拡大を招いているとの認識が広まり、感染が抑制されている地域でも旅行が手控えられている現状は、産業の浮揚、地域経済の活性化を損ねていると主張する。
8日には西村康稔経済再生担当相、11日には赤羽一嘉国土交通相に要請書を手渡した。今後、厚生労働相にも要請し、連合や各政党に支援を求める。
代表して説明したJR連合の荻山市朗会長は「人材の流出と産業衰退の同時進行が危惧される。離職が増え、新規採用も抑制している」と危機感を募らせた。「新幹線や航空機、ホテルでクラスターは発生していない。国が率先し実効ある不安解消策を」と訴えた。
●著しい業績悪化に
3産別の業種は広域移動を支えている。この1年で業績は著しく落ち込んだ。
JR各社の2020年度決算の収益の合計は、収入が対前年比で半減に近い約3兆円の減。1兆円の最終赤字を計上した。このままではローカル線の維持に関わるとの焦りも見える。
大手航空会社も20年度決算は前年比約70%の減収。国際線は需要が消えた。一時金大幅減、定期昇給見送り、希望退職、他業種への在籍出向、経費削減でしのぐ。
観光産業も厳しい。サービス連合によると、国内主要旅行業者47社・グループの20年度の旅行取扱額は78・4%の大幅減だった。特に海外旅行は出入国ともに96~97%の減だ。
いずれの産別も、自助努力は既に限界を超え、雇用調整助成金だけでは産業、企業を維持していくのは困難だとし、一刻も早い人流の復活と国の支援、科学的な感染対策を政府に求めている。
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