今年度の改定での最低賃金引き上げを示唆する骨太方針原案が6月9日、公表された。「地域間格差への配慮」が初めて盛り込まれ、中小企業支援の強化も昨年と比べ具体的な記述となっている。
第2次安倍政権以降、骨太方針で最賃引き上げについての政府の考え方が示され、それを踏まえた改定が行われてきた。昨年はコロナ禍を理由に引き上げに慎重な見解が示され、実際に中央最低賃金審議会は目安を示さなかった。
原案は「わが国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、感染症の影響で賃金格差が広がる中、格差是正には最低賃金の引き上げが不可欠」と指摘。コロナ禍でも最賃を引き上げた諸外国の事例や、「3%」などの日本の近年の引き上げ実績を参考に、今年の引き上げに取り組むとした。
厚生労働省の資料によると、諸外国での「コロナ禍の最賃決定」は、イギリス2・2%、フランス0・99%、ドイツ2・7%、韓国1・5%(いずれも2021年に限定)。
中小企業が賃上げしやすい環境整備として、原案は「生産性向上に取り組む中小企業への支援強化」や、下請け取引の適正化、金融支援に一層取り組むとしている。中小支援の強化については、助成金の拡充を政府がこのほど決めたことが報じられている。労務費上昇分を下請け受注価格に転嫁するために、発注元企業との価格交渉期間を設けるという具体的な対応も盛り込んだ。
原案には「地域間格差への配慮」が初めて盛り込まれた。現行で最大221円もの時給格差の是正へ、今年の中央最賃審がどのような答申を示すか。最低額はいまだ792円。C、Dランクの引き上げ幅が、東京や大阪を上回れるかが注目される。
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