中小業者でつくる団体が6月4日、国会内で緊急集会を開き、10月に登録が始まる「消費税インボイス(適格請求書)制度」について実施の延期や中止を訴えた。「インボイス制度」は事実上、消費税の免税業者に課税業者となるよう迫るもので、建設労組や個人タクシー団体などから「コロナ禍でやることか」「廃業に追い込まれる」などの発言が相次いだ。
ジャーナリストの斎藤貴男さんや税理士団体も見直しや中止を訴えた。
●市場から排除する制度
京都個人タクシー互助協同組合の洲見雅義理事長は「コロナ禍で車を1日走らせても売り上げが5千円にしかならない時もある。(営業が)冷えきっている時に、さらに追い詰める制度を進めるのか? インボイス制度の導入を阻止したい」と訴えた。
一人親方など個人事業主の組合員のほとんどが免税業者だという、全国建設労働組合総連合(全建総連)東京都連合会の宮本英典書記長は「一人親方などが取引先から排除される懸念がある。国は中小業者がつぶれてもいいと思っているのか」と語った。
建交労軽貨物ユニオン神奈川ダンプ支部の高橋英晴さんは、ダンプカーの運転手(一人親方)が課税業者になると年約40~50万円の負担が増え、廃業に追い込まると指摘。「運送業もコロナ禍で市民生活を支えているエッセンシャルワークだ。(免税業者を)市場から排除するのがインボイス制度。廃止しかない」と話した。
ジャーナリストの斎藤貴男さんは「消費税を長年取材してきた者として怖さを感じる。中小業者の問題だけではなく民主主義の問題でもある」と話した。
発言した税理士は、政治的な課題について、あまり発信しないという日本税理士会連合会が税制改正の建議書で、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)を見直す」と明記していると語った。
●約370万人に影響
年間の売上が1千万円以下の業者は消費税納税が免除されている。消費税による仕入れ値の増額分を、価格に転嫁できない零細業者の実情を考慮した仕組み。
課税業者への選択を迫られるのは個人タクシーや運送下請け業者、映画・演劇・音楽・英語教室などの教師、イラストレーターなど出版関連業、生命保険や損保保険の代理店、建設業の下請け業者、外注化された社員など多岐にわたる。国税庁はフリーランスの75%、約370万人がインボイス制度導入によって「課税業者」になることを選択すると見ている。
■インボイス制度とは
消費税のインボイス制度は「適格請求書等保存方式」ともいわれます。「適格請求書」とは登録番号や税率ごとに区分した消費税額などを明記した請求書。
消費税の課税業者は、売り上げにかかる消費税額から、仕入れなどに含まれている「消費税分」を差し引いて納税します。「仕入税額控除」という方式です。政府は2023年10月以降、「適格請求書」の保存を仕入れ税額控除の要件とすることを決めています(経過措置あり)。
免税業者のフリーランスなど個人事業主や零細企業は、親会社や取引先から適格請求書の提出を求められる可能性があり、課税業者になって消費税を負担するのか、免税業者のままでいて取引先から控除分の値引きを迫られるのかという、究極の選択を求められることが危惧されています。
インボイス制度の登録受付は10月から開始。
〈写真〉集会で発言する斎藤貴男さん(6月4日、都内)
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