米軍や自衛隊の基地周辺に住む住民の調査や、土地・建物の利用を制限する法案が今、国会で審議されている。戦争をさせない1000人委員会は5月27日、同法案の廃案を求めるオンライン集会を開いた。米軍基地が集中する沖縄からは「反基地・反爆音の運動を弾圧する立法であり、絶対通してはならない」などの声が上がった。
法案の名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」で、重要土地調査規制法案、土地利用規制法案などと略されている。
基地などの周囲約1キロメートル内に住む住民の個人情報を収集し、その施設の機能を阻害する恐れがあると判断すれば、撮影や騒音測定に禁止命令を出せる。土地や家屋を収用することも可能になるという。友人など「関係者」に情報提供を義務付け、拒否すれば罰金刑も科す内容だ。
沖縄平和運動センターの岸本喬さんは「本島中部地域だと約20万人が監視対象になる。監視すべきは危険な米軍基地であり、逆に反基地運動を監視するのは許せない」と憤った。
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの女性は「要するに、うるさいやつらを黙らせようという法案だ」と述べ、廃案を求めた。
原発も対象に入る。中国電力が建設を予定している上関(かみのせき)原発に反対している広島県原水禁は「当初の建設予定地の20%は共有地を含め、反対派地主が所有している。各地主の個人情報が把握されれば、それを切り崩しの材料に使ってくるのではないか」。
●軍事目的の土地収用も
名古屋学院大学の飯島滋明教授が法案の危険性について講演した。「心配し過ぎでは」という声があることに対して「既に(自衛隊施設がある)宮古島や奄美大島では住民監視のための情報保全隊が置かれ、与那国駐屯地では許可のない撮影やビラ宣伝、拡声器の使用、座り込みを禁止する看板が立てられている」とし、法案はこうした措置に法的根拠を与えることになる、と懸念した。
飯島教授は、自衛隊百里基地内に「くの字」型に曲がった道路があることを紹介した。民有地があるためで、自衛隊内には「不便だ」との声があるものの、そのままになっているという。「これまでは、軍事目的のための土地収用は認められなかったが、(法案が成立すれば)重要施設の機能を阻害しているとして、強制収用の対象になりかねない」と指摘した。
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