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    低額県ほど上がる仕組みを/自民党最賃議連/政府内での議論を要請

     地域別最低賃金の「全国一元化」を目指す自民党内の議員連盟(衛藤征士郎会長)は5月20日、国会内で総会を開き、最低賃金の制度のあり方を政府内で議論していくよう強く要請する決議を確認した。一元化への過渡的な措置として、最賃が低い県ほど毎年の引き上げ幅を高くするルールの確立を提唱している。近く決議を菅義偉首相に手渡すという。

     決議は、デフレ経済からの脱却のためには雇用者所得を増やして需要を喚起することが必要であり、「それを支える最低賃金の引き上げは死活的に重要である」と指摘。最大時給格差が221円に及ぶ現状は人の流れをせき止めるとし、「最賃の全国一元化は必要な政策転換だ」とした。

     その上で、「一挙に全国一元化といっても無理なので、今後は、引き上げ勧告幅(中央最低賃金審議会の答申)を必ずA地域<B地域<C地域<D地域となるようなルールを確立することが必要」とした。

     現行の制度運用ではDやC、Bランクの引き上げ幅の答申が、上位ランクを超えることはない。最賃行政の見直しと政府の決断を求める内容だ。

     決議は、英国が昨春、低賃金で働くエッセンシャルワーカーを支えるために最賃を大幅に引き上げたことに言及。「コロナ後の社会の構造変化を見越した政策転換の一環として、わが国の最低賃金のあり方を政府の中で議論していくことを強く要請する」として、制度見直しへの着手を求めている。

     衛藤会長は、児童虐待が年間10万件を超える背景に貧困化による困窮もあるのではないかと述べ、「最賃引き上げに向けたロードマップをつくるよう求めていく」と政府に働きかけていく考えを語った。