超党派の国会議員でつくるILO活動推進議員連盟(議連)が、強制労働を禁じたILO105号条約の批准に向けて、国家公務員法の改正案を準備している。同法の罰則にある「懲役」刑が強制労働に当たり、批准のネックになっているためだ。法案は「懲役」を、刑務所内作業を伴わない「禁錮」に変更するという内容。国公労連の九後健治委員長は「条約批准は歓迎すべきことだが、禁錮刑に変えればいいという姑息(こそく)なやり方には納得できない」と語っている。
●禁錮に変えるだけ?
――法案に対する国公労連のスタンスは?
九後 法案に賛成か反対かと問われれば、賛成することになる。しかし、懲役を禁錮に変えるだけという姑息なやり方には納得できない。国公法を見直すなら、105号条約を批准するためだけのものに矮小(わいしょう)化せず、国家公務員の基本的人権を保障する観点に立った議論が必要ではないか。
●政治活動の保障を
――具体的にはどういうことですか?
国公法は98条2項でストライキを、102条で政治活動を禁じている。違反した場合は、110条で「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科される。私たちは、国家公務員に対しても一般国民と同様に政治活動の自由を保障すべきだと考える。
公務員には「政治的中立」が必要だといわれる。しかし、国民が望んでいるのは行政の中立的な運営や公正性であり、憲法に定められた権利の享受だ。個々の公務員の政治的信条や見解がどうであれ、行政運営に影響することはない。
――いわゆる「モリカケ」事件などでは、公務員の忖度(そんたく)が批判されました。これは問題ではないのでしょうか?
モリカケや「桜」事件であらわになった公務員の忖度は、公務の公正な運営を阻害するもの。労働組合としては、むしろ、そうした問題に内部から声を上げ、正す運動を進める上でも一般公務員に政治活動の自由を幅広く保障することが必要だ。
国公法の罰則に関していえば、一般公務員と、行政運営や政策について決定権限を持つ幹部職員とは分けて考えてほしい。例えば本省なら課長級以上の幹部職員に限定し、少なくとも一般公務員には罰則規定の適用を除外すべきだ。
●労働基本権保障が先決
――スト禁止についても見直すべきと?
日本は、団結権や団体交渉権など労働基本権の保障について定めたILO87号と98号条約を批准しているにもかかわらず、公務員のストライキを懲役などの罰則をもって禁じている。これは条約違反に当たるとして、ILOから再三にわたって勧告を受けている。日本政府がいまだに勧告を無視し続けていることが問われなければならない。
105号条約の批准について考える前に、まずは87号と98号条約違反の現状を是正し、労働基本権を保障するのが筋ではないか。
――議連は議員立法での成立を目指しています。どう考えますか?
政府提出の閣法として国公法改正を行うべきだ。議員立法でも閣法でも、改正されれば同じという人もいるだろう。だが、議員立法だと、「あれは議会が決めたことだから」と、責任があいまいになりがち。使用者たる政府の責任を果たさせることが求められる。
〈写真〉九後委員長
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