日本航空(JAL)による不当解雇の撤回を求めて闘ってきた元機長3人が、新たに労働組合を結成し5月12日、東京都労働委員会に「団体交渉拒否は不当労働行為だ」として救済を申し立てた。都労委での審理を通じて、JALとの交渉窓口を「こじ開けたい」という。元機長らは同日の会見で「日航解雇争議は10年を超えた。(交渉を通じて)なんとか解決したい」と語った。
救済を申し立てたのは「JAL被解雇者労働組合」。元機長の山口宏弥委員長(運航乗務員争議団長)、清田均副委員長(同事務局長)、山﨑秀樹書記長(同副団長)の3人で4月4日に結成した。労組結成後、会社側に再三、団交を申し入れたが拒否されている。
●「団体交渉権はある」
解雇当時(2010年)は日本航空機長組合(現在、日本航空乗員組合に統合)の組合員だったが、解雇の是非を裁判で争う中、12年に定年を迎え組合員資格を失った。会社側が争議団との交渉を拒否し続けているため、3人は会社側に直接意見を述べる機会がなく、この状況を打開しようと労組を結成した。労組は日本航空乗員組合、日本航空キャビンクルーユニオンと同じ争議解決の「統一要求」を掲げる。
定年から数年経過した「被解雇者」に団体交渉権はあるのかという記者の質問に対して、山口委員長は「解雇撤回を求めて会社側と争い続け、JALがまともに対応しなかったために10年以上もたってしまった。活動の継続性があるので問題ない」とする、労働法学者の萬井隆令龍谷大学名誉教授のコメントを紹介した。
山口委員長は18年に「解決に踏み出す」という経営方針が発表されたにもかかわらず、いまだに解決していないことについて「(会社側の)『無責任体質』に尽きる。だからと言って諦めるわけにはいかない。(解決への)特効薬はないが闘い続ける」と話した。
●〈JAL不当解雇事件〉
2010年12月31日、機長など運航乗務員81人、客室乗務員84人が「整理解雇」された事件。最高裁での地位確認訴訟(15年、原告敗訴)と不当労働行為事件(労組への支配介入。16年、原告勝訴)の判断を受けて、当時の石井啓一国土交通大臣が「日本航空で適切に対処すべき」と述べ(16年)、赤坂祐二JAL社長も「できるだけ早期に解決したい」と発言。「整理解雇問題の解決に踏み出す」経営方針が発表された(18年)が、いまだに解決していない。
国際労働機関(ILO)から4回にわたって勧告が出され、昨年12月には田村憲久厚生労働大臣がJAL解雇争議に触れて「労働委員会の中でいろいろな対応ができる」と労働委員会の活用を促す答弁をしていた。
〈写真〉新しく労組を結成した山口委員長(左)と山﨑書記長(5月12日、都内)
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