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    五輪中止を政府に要請/全国医師ユニオン/「東京がウイルス培養の場に」

     勤務医でつくる全国医師ユニオン(植山直人代表)は5月13日、東京五輪の中止を求める要請書を政府に提出した。世界でさまざまな変異株が生じる中、各国から多数の選手団やスタッフ、メディア関係者を招き入れれば、「東京が危険な新型コロナウイルスの培養の場になりかねない」と警告した。

     同日開いた会見で、植山代表は「新型コロナのさまざまな変異株を持つ人が日本に来れば、場合によってはワクチンの効果を減じるような、新たな変異株を生み出す可能性がある。コロナ禍以降、世界ではそのような環境がつくられることはなかったが、7月に東京五輪を開催すれば、そうした危険な環境をつくることになりかねない。無観客でも今やるべきではない」と語った。

     日本のワクチン接種が先進国で大きく立ち遅れていることにも言及。感染の少ない国の選手に恐怖を与える状態での開催は「無責任だ」と指摘した。国際オリンピック委員会(IOC)が選手への優先接種を行うと述べていることについては、ワクチンは高齢者や基礎疾患を持つ人などを優先すべきであり「あり得ない」と語気を強めた。

     植山代表は、感染拡大による医療資材の不足を懸念する。爆発的感染が続くインドでは、人工呼吸に必要な酸素が不足。国内でも重症患者の治療に欠かせない麻酔薬の供給が滞り始めているとの現場の声を伝え、「患者数を減らさなければならない」と強調した。

     

    〈写真〉医師ユニオンの植山代表は「五輪中止の判断(の責任)はIOCではなく日本政府にある」として、政府の決断を求めた(5月13日、都内)