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    団結権保護法案の制定に意欲/労働者重視に転じた米政権

     5月1日。メーデーのこの日、米オークランドではライドシェア運転手が車両デモを敢行し、団結権保護法案の早期制定を求めた。

     この法案は、バイデン政権が掲げる労働法の大改革で、ユニオンショップ協定の禁止を認める州法(労働権法)を廃止し、全国労働関係委員会(NLRB)の権限を強化させる内容だ。インターネットを介した仕事を繰り返すギグ労働者については、「請負」という誤った分類を改め、最低賃金や有給休暇を保障する。

     バイデン大統領の労働者重視の政策については、「予測をはるかに超えて実行している」(サンフランシスコ州立大学のジョン・ローガン教授)という見方が大勢だ。

     

    ●最賃15ドルも視野に

     

     大統領就任初日には、前政権で使用者寄りの判断を繰り返したNLRB議長を更迭。最低賃金を全米で一律15ドルに引き上げようと、手始めに連邦政府で働く清掃員などにこの最賃を適用した。

     アラバマ州でアマゾン労働者を組織化する試みは、会社の妨害で労組結成に至らなかったが、「組合加入を決めるのは労働者本人であり、使用者ではない」と明言。4月末には、政権内に特別チームを立ち上げ、組合作りや団体交渉を円滑にして、使用者側に偏り過ぎている労使の力関係を、改める方策を半年以内に提言するよう指示した。

     ウーバーやリフトがカリフォルニア州でギグ労働者を保護する州法を骨抜きにしたことは記憶に新しいが、ウォルシュ労働長官は「ギグ労働者の再分類」に言及するなど、労働者寄りの姿勢は鮮明だ。

     一連の政策で最も重要な課題が、団結権保護法案の成立だ。実現すれば1930年代以来の労働法改革となる。だからこそ経済界や共和党の反発は強い。3月に下院を通過したが、上院では採決の見通しが立っていない。組合重視の政策がかけ声倒れに終わる可能性は否めない。

     

    ●分厚い中間層こそ

     

     バイデン政権があえてその制定を目指すのは、貧富の差が拡大し続ける中、勤労者の不満がトランプ支持につながったり、極右の台頭を許したりした苦い経験があるからだ。10・8%と低迷する労働組合の組織率を上昇させ、分厚い中流層を復活させることなくして、民主党の支持基盤は回復しないのだ。

     米国ではギグ労働者が5500万人を超える一方で、米労働局の統計によれば、6千万人の就労者(未組織労働者)は労働組合に加入したいと考えている。団結権保護法案の行方にかかわらず、そうした声をどう力に変えていくのか。労働運動の将来も問われている。(国際運輸労連政策部長 浦田誠)