核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲国際運営委員(ピースボート共同代表)は、国連の核不拡散条約(NPT)再検討会議(8月2~27日予定)に向けて「日本が核抑止力に向き合い、具体的な議論を始めることが重要」と訴えている。茂木敏充外務大臣の「核(抑止力)に頼らないのが望ましい。検討を進めなければいけない」という発言を受けての提起だ。国際NGOのピースボートが主催するオンライン講演会(4月21日)での発言。
●選挙の年、議論起こす
茂木外相の発言があったのは、2月の衆議院予算委員会。核抑止に代わる新しい考え方を問われて答えた。
日本政府が立ち上げ、核保有国などの有識者が参加する「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の議長レポート(2019年10月)でも「核抑止が世界の安全保障にとって危険な基礎であり、解決策を模索すべき」と指摘している。(表)
川崎さんは茂木外相の発言について「踏み込んだ内容で注目している。今年は衆議院選挙の年。(検討を進めるというのなら)どういう代替策をとるのか、核兵器禁止条約への賛否とともに、市民が国会議員や候補者に問いかけ、核兵器廃絶への議論を起こそう」と呼びかけた。
●現実的な安全保障とは
川崎さんは唯一の戦争被爆国である日本が、核兵器使用を前提とする「核抑止力」を政策に掲げること自体、道徳的に正しいのかと問いかけた。
核抑止力の「実効性」をあらためて考える必要があると強調。米国同時多発テロ事件(01年9月)を例に挙げて、こう話した。
「当時、米国は1万発以上の核兵器を保有していたが、原始的なテロ行為により3千人以上が犠牲となる悲惨な事件が起き、米国の安全保障が揺らいだ。核抑止力が『機能していた』と言えるのか。過去にキューバ危機(62年)など核戦争が起こる危険な状態はあったが、核兵器があることで戦争を防いだという歴史的なデータはない。核兵器に頼らない安全保障政策が現実的だ。茂木外相や賢人会議も同様の主張をしている」
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今年1月に発効した核兵器禁止条約の第1回締約国会議は来年1月12日から3日間、オーストリアのウィーンで開催される。同会議へのオブザーバー参加も含めて、日本政府の核兵器に対する姿勢が世界から問われている。
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