日本政府の入管法改定案に対し、国連の専門家から「国際人権法に違反する」との厳しい批判の声が上がっている。国連人権理事会の恣意(しい)的拘禁作業部会と3人の特別報告者が3月31日、政府に共同書簡を送付した。人権後進国といわれたも同然で、4月22日の緊急集会では「日本人として恥ずかしい」「なんとしても廃案に」といった発言が相次いだ。
●異例な「原則収容」
共同書簡は、法案が難民申請を3回以上行った者を強制送還の対象にしたことについて「生命や権利が脅かされる国・地域への強制送還を禁止した原則(ノン・ルフーマン原則)に反する」と批判した。
加えて、国連がこれまでに指摘してきた、入管施設に関する問題点が改善されていないとも指摘。具体的には(1)在留資格のない人を原則として収容している(2)収容の決定に裁判官の関与が保障されていない(3)収容期間に上限がない(無期限)――などを挙げ、人権について定めた国連の自由権規約に違反すると明記した。子どもの収容を禁じる明確な法規定がない点も「遺憾」とした。
法案は今回、仮放免のように施設の外に出られる監理制度という仕組みをつくった。政府は改善点だとアピールするが、共同書簡は入管庁の裁量で例外的にのみ適用されるもので、「身体の自由」原則に反するとして評価していない。
共同書簡は、難民申請者や移住者の人権保護の強化こそが必要だとし、国際法違反となる今回の法改定を急がず、留保すべきと訴えている。
●まるで強制収容所
国連からの厳しい指摘がなされても、今のところ、政府は聞く耳を持っていないようだ。
そうした姿勢を続けてくる中で、多くの犠牲者が生み出されている。今年3月には、名古屋の収容施設でスリランカ人女性が死亡する事件が起きたばかり。体調が悪化して自力で歩行できない状態だったにもかかわらず、適切な治療をせず放置したためではないかと指摘される。
名古屋だけではない。長崎県大村の施設に収容されている人を支援する牧師の柚之原寛史さんは22日の集会にオンラインで参加し、こう憤った。
「拒食症になり施設内で亡くなった人がいた。甲状腺の病気を患う難民申請者もいる。収容されている33人はほとんど全員が病気。長い人で8年以上、ここを出られないでいる。強制収容所のような場所だ」
問題の多い入管施設を温存し、命の危険を伴う強制送還に道を開く入管法改定案。日本は「人権後進国」という汚名を着たままでいいのかが問われている。
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