2021春闘では、コロナ禍でも多くの組合が時短、テレワーク対応、定年延長、均等待遇などの働き方改善で成果を上げている。一方、政府与党は「選択的週休3日制」を提言する方向だ。導入状況と課題に焦点を当てた。
●テレワーク手当も確保
コロナ禍で新たな課題となっているテレワークへの対応。連合では241組合が取り組み、70組合が労使合意している。
電機連合はテレワークの労働時間と働き方で労使協議を推進。労働時間については「日常の勤務形態を基本」とし、労働時間の把握は「客観的な方法で適正に行う」ことを呼び掛けている。設備や費用については「原則、会社の貸与または負担」とした。
「働き方」に関わる「業績評価」に関しては、「労働者に事前に評価制度、賃金」の説明と、「公平・公正な評価」を強調。社内教育の充実も重視している。
富士通など電機各社はテレワークに伴う在宅勤務手当を月3千~5千円支給、UAゼンセンの単組は日額200円を実現した。全労連加盟のJMITU日本IBM支部は月8千円を要求し、交渉している。
●厳しい「一時金支給」
正規・非正規間の不合理な待遇格差を禁じるパート・有期雇用法の「同一労働同一賃金」が4月から中小企業にも適用(大企業は昨年施行)された。
連合調査では、「福利厚生・安全管理」に183組合が取り組み、103組合が前進回答と高率だ。ただ、焦点の「基本給など賃金決定基準の整備」は要求155組合で実現は19組合、「(非正規労働者への)一時金支給」は要求350組合で実現69組合と少ない。
同法によれば、基本給では「能力、成果、勤続年数」など人材活用の違いによる差を認めている。一時金も「会社への貢献度」など恣意(しい)的な判断による格差が容認される。いずれも是正が求められる。
不合理な格差是正を求めて日本郵政を相手取った裁判で、最高裁が昨年、判断を示した。判決は、扶養手当、有給の病気休暇などを付与しないのは不合理で違法とした。
一方、一時金については格差を容認。組合は「相違に応じた支給」を求める厚労省指針に反するとして批判を強めている。
●休日増で大きな成果
長時間労働の是正では、残業規制の36協定見直しを859組合が要求し、352組合が成果を上げた。
UAゼンセンでは、年2回7日以上の連続休暇の完全取得など、36組合が休日増・労働時間短縮を実現。「勤務間インターバル」の導入も増えている。
4月から、希望者に70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となった。連合調査では、65歳までの雇用確保は要求764組合で、実現は102組合。70歳までの就労機会確保は要求229組合で、実現は59組合だった。
70歳までの就業機会確保では定年延長・廃止や再雇用に加え、個人事業主など業務請負も選択肢に含まれている。連合は70歳までの雇用については非雇用でなく、労働法制や最低賃金が適用される雇用による就労継続を提起している。
●週休2日もまだ4割
「選択的週休3日制」が今後新たな争点となる。自民党の「一億総活躍推進本部」は4月20日に提言をまとめ、政府も6月の経済財政運営指針「骨太の方針」に反映する方向だ。コロナ禍での多様な働き方として、テレワークや時差出勤と併せて導入を進めるという。
主な導入企業は電通、味の素、みずほ銀行、ユニクロ(ファーストリテイリング)、ヤマト運輸など。メリットは、育児・介護との両立や、地域活動への参加、副業・兼業が可能になることが挙げられる。
一方、デメリットは、給与が1~2割減る企業や労働時間の延長、兼業による長時間労働・休日出勤の増加が指摘されている。制度化されると「日数限定正社員」とされ、正社員の多様化と低賃金・不安定雇用化となりかねない。
連合の神津里季生会長は会見で「ニーズの有無を含め対応は労使に任せるべきだ」と述べ、コロナ禍の下では「生活保障を含め最低限のセーフティーネットの拡充が重要だ」との見解を表明した。連合幹部も「完全週休2日制の実施はまだ4割程度にとどまっている」と問題点を指摘する。
経団連は多様な働き方の実現や労働移動を狙い、労働時間法制の改悪や、違法解雇の金銭解決制導入を提起している。
コロナ禍の下での解雇や雇い止めは4月で10万人超と深刻だ。非正規で働く人のうち実質的失業者は女性で約100万人いるともいわれる。労働条件整備と就労促進、失業給付の拡充や、非雇用就労者の法的保護など雇用・生活・福祉の総合的な対策が求められる。(ジャーナリスト・鹿田勝一)
コメントをお書きください