出身国に帰れない事情を抱えている外国人を、さらに追い詰める法案が衆議院で審議されている。「出入国管理法及び難民認定法(入管法)」の改定案だ。劣悪な環境のまま、入管施設での長期収容を継続しつつ、難民申請中などで在留資格のない人を強制送還したり、送還拒否者に刑事罰を与えたりする内容。対象となる人々が4月22日、国会内の集会で「法案が通れば、命が危険にさらされる」と訴えた。
集会は、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)や全国難民弁護団連絡会議などでつくる実行委員会が主催した。
●送還されたら死刑に/ミャンマー人
ミャンマーから来たポーヤンさん(仮名)は、少数民族出身。長年にわたって国軍による少数民族弾圧が続いており、特に女性は性的暴行や殺りく、人身売買の危険があって難民キャンプに逃れている人も少なくないという。
ポーヤンさんは「国軍は今年、クーデターを起こして市民を弾圧しているが、少数民族にとっては以前から行われてきたこと。私が今ミャンマーに帰れば、逮捕され、死刑にされてしまう。日本で難民として保護され、夫と子どもたちと安心して暮らしていくことを望みます」と語った。
●送還拒否なら刑務所か/イラン人
入管施設に4年間収容され、昨年4月に仮放免になったイラン人のサファリさん。外に出るためハンガーストライキを繰り返すなど、心身ともに過酷な状況に陥った経験を紹介しながら、改定法案について、こう述べた。
「もし入管法が変われば、私は3回目の難民申請中なので強制送還の対象になる。イランに帰れば殺される。『帰らない』と言えば刑務所に送られる。こうやっていじめて、自分の口から『帰る』と言わせるまで入管に収容したり、刑務所に送ったりするのか。入管法が変わることは不安だし、とても怖い」
●家族一緒にいたいだけ/ペルー人
両親がペルー人で、日本生まれの高校3年生は、家族がバラバラになる恐れがあると訴えた。
父親が突然、入管施設に収容され、その後にペルーに強制送還されてショックを受けた。「僕はもう、何もしたくなくなった。野球部もやめたし、勉強する気が起らなかった。父と過ごした日常がなつかしい」と振り返りながら、今は大学進学に努力している日々だという。
入管法の改定案については「やばい、と怖くなった。父を国外に引き離され、今は母も奪われそうになっている。僕が『母さんまでも奪わないでください』と言ったとしたら、(政府は)『母親と一緒に子どもも出ていけ』と言うのか」と憤った。
その上で「日本で生まれ育った僕たちが日本で生きることを望むのは悪いことですか。ペルーへの送還を拒んだら犯罪者になるんですか。僕たちから両親を奪わないでください。家族一緒に住まわせてください」と語った。
〈写真〉集会参加者からは「国際的な人権水準に照らせば、恥ずかしい法案だ」との指摘が相次いだ(4月22日、国会内)
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