建設従事者のアスベスト被害を救済する基金制度創設の交渉が本格化する中、関礼子立教大学教授の提言が注目を集めている。同教授は「建材メーカーが基金制度創設に積極的にかかわることは、メーカーにとってもメリットがある」と主張する。3月23日の基金制度を考えるシンポジウムで環境社会学の立場から講演した。
●CSRの位置づけを
関教授は最高裁判断によって建材メーカーの法的責任が確定する中、メーカーが積極的に基金制度に出資することは、企業の社会的責任(CSR)、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿うものであると強調。運動側にもその視点が重要だと話す。
近年、環境問題からCSRへの関心が高まっている。それを反映して多くの企業が積極的に取り組む姿勢をアピールしている。建設アスベスト訴訟で被告となったメーカーも例外ではない。その一つ、ニチアスは環境報告書(2005年)でアスベスト被害者への支援や、含有製品の代替化などに取り組む姿勢を表明している。
●SDGsの理念と合致
関教授は「(メーカーが)建設アスベスト問題を消極的責任(法的責任)で対応するなら単なる『コスト』となるが、CSRから積極的責任として対応すれば社会的、倫理的、国際的な(企業のイメージアップへの)『投資』になる」と発想の転換を促す。
基金への出資は「アスベスト建材を製造販売し続けた企業」が「過去の過ちに向き合い社会的責任を果たす企業」として世論に迎えられ、企業価値を守ることにつながるという。
多くの建材メーカーがSDGsを掲げる。建設アスベスト問題に関わるのは「すべての人に健康と福祉を」(目標3)、「つくる責任、つかう責任」(同12)など五つ。目標12の解説には「非金属鉱物」(アスベスト)の文字もある。関教授は「SDGsの『誰ひとり取り残さない』という理念は基金制度の理念と合致する。将来世代へのギフト(贈り物)になるような制度構築を望む」と期待を表明した。
〈写真〉講演する関礼子立教大学教授(3月23日、国会内)
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