昨年の春以降、自治体で働く非正規公務員はコロナ禍と会計年度任用職員への転換という二つの〃災難〃に見舞われた。そんな中、雇用や公共サービスのありようについて議論する緊急シンポジウム「官製ワーキングプアの女性たち(コロナ後のリアル)」が3月20日、オンラインで開かれた。参加者は専門職として誇りを持って働き続けることの難しさなどを告発した。主催は、同シンポ実行委員会。
現場報告の中から3人の発言要旨を紹介する。
手取り10万円では無理/藍野美佳(婦人相談員)
家庭内暴力(DV)に関する相談が多く、行政が命の最後のとりでになっている。当事者の人生はそれぞれで、支援内容にマニュアルはなく、さまざまな知識とスキルが要請される専門職である。
私は週30時間働き、手取りで月10万円ほど。8年働いているが、昇給も退職金もない。それでも自腹で書籍を買って勉強し、研修も自費で受けてきた。
コロナ禍の下、DVや虐待はもっと増える。当事者と伴走するためにも学習が必要で、月10万円ではとても無理。やる気だけではできない仕事だ。
賃上げを交渉してみたけれど、却下された。被害者のことを考えると、この仕事を辞めたくはない。でも転職を考えざるを得ないかもしれない。
委託で利用者置き去り/中尾光江(守口市学童保育員労組書記長)
学童保育の指導員というと、「子どもと遊んでいるだけ」とみられがちだが、子どもたちの成長に関わる専門性の高い職業だと考えている。
一昨年、共立メンテナンスに民間委託された。昨年3月には、学校が一斉休校になる中で学童は、非正規職員とアルバイトだけで開いた。消毒用アルコールもマスクも不十分で、子どもたちの感染防止に必死になって働いた。
そんな時に雇い止めを通知された。「会社に反抗的」など身に覚えのない理由だった。誇りを持って働いてきたのに、くやしくて、つらくて。
現場は子どもや親が置き去りになっていて、緊急事態宣言下ではおやつも出なくなったと聞いている。
雇い止めされた職員のうち、ベテランの10人は裁判提訴し、労働委員会にも申し立てて闘っている。
市場化と福祉両立せず/三浦かおり(介護・福祉ユニオン共同代表)
保育士からの相談を多く受けている。この20年で株式会社の参入や民間委託などの市場化が進み、現場に影響している。
コストカットが重視されるようになった。1人で多くの子どもの面倒をみることになって余裕がなく、怒鳴ってしまうことも。おもちゃを買ってもらえなくなったとか、栄養士作成のメニューをやめたため、子どもの食が進まなくなった話も聞いている。そんな事態が広がっている。
最近は、保育の質が壊されることに異議を唱える動きも起きている。ストを打つ職場が出てきたし、団体交渉で増員を実現した成果もある。
コスト重視だと、突然閉園することがある。私たちは父母と協力して自主運営し(次の園が決まるまでの間を)つなぐこともした。市場化と福祉は相反するものではないか。根本的に問い直す時期に来たと思う。
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