原水爆禁止日本国民会議(原水禁)はこのほど、エネルギー需給見通しの独自試算に基づき、エネルギー政策を転換すれば「2030年に原発ゼロ、石炭火力発電ゼロを達成できる」との新提言を発表した。50年には電力供給に占める再生可能エネルギー比率100%を達成するという内容だ。
原水禁の提言は05年と11年に次ぎ、今回で3度目。東京電力福島第1原発事故から10年を機に、新たな提言を作ろうと市民団体や専門家などで「提言作成委員会」を立ち上げ、約1年かけて議論を重ねた。提言内容は8項目(表)。
●脱炭素政策に位置付け
作成委員会は国内総生産(GDP)成長率や人口減少の見通しなどから50年までのエネルギー需給を推計した。事業や家庭の電化率が9割になったとしても、電力需要は徐々に減っていくとする。一方の電力供給は再生可能エネルギーの普及推進によって30年時点で原発、石炭火力発電ともにゼロ、50年時点ではLNG(液化天然ガス)火力発電がゼロでも支障はないという結果になった。
提言は政府に対し、30年までに原発ゼロ達成の宣言と、脱原発政策の策定を要求。それを「グリーンリカバリー政策」として位置付け、コロナ後の社会を見据えて、大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済ではなく、脱炭素による循環型社会を目指すべきと訴えている。
●2050年を見据えて
作成委員会の長谷川公一座長(東北大学名誉教授)は「原発事故から10年経った日本が、このままでいいのか?という思いを提言に込めた」と話した。
松久保肇委員(原子力資料情報室事務局長)は「50年は、原発事故による除染作業で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の期限(45年)、政府目標である福島第1原発廃炉作業の完了時期(41~51年)など原発問題に関わる大きな節目。それを見据えて策定した」と説明した。
原水禁の藤本泰成副議長は「脱炭素に向けた動きが〃原発回帰〃になってはならない。この提言を持って新しい時代の運動に取り組む」と決意を表明した。
〈写真〉ルポライターの鎌田慧さん(左)も会見に参加した。主催者あいさつをする藤本原水禁副議長(右)(3月4日、都内)
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