フリーランスが安心して働けるようにするとして、政府は昨年末にガイドライン案をまとめた。これについて、当事者らが3月5日、国会内でシンポジウムを開き、現場の実態を踏まえた内容とするよう訴えた。特に、一方的な契約解除への規制が欠けているとして改善を求めている。
政府は個人事業主であるフリーランスの働き方を、多様な働き方、高齢者雇用の拡大、働き手の増加に貢献できるとして、成長戦略実行計画で「保護ルールの整備」を決めた。昨年末にはガイドライン案を策定。独占禁止法や下請け法の経済規制と、保護すべき労働者に該当する場合の判断基準を示している。
ギグワーカー(インターネットで仕事を受ける働き手)の組合組織化を支援してきた川上資人弁護士は「労働者が最も困難な場面への言及がない」と、致命的な欠陥を指摘する。
その一つが労災補償だ。国は労災保険の特別加入の対象を広げる方向。しかし、本来保険料は使用者負担だが、特別加入は働き手が負担しなければならない。その負担が重荷で保険料を低くせざるを得ず、十分な補償を得られないことも少なくない。事実上の使用者である発注者の責任を重くみるべきと同弁護士は指摘する。
もう一つが、発注者からの一方的な契約解除への規制がないこと。川上弁護士は「ウーバーイーツ配達員のように自由度は高いが、報酬が一方的に決められる働き方は、伝統的な労働者概念では捕捉できない。それなのにガイドラインは厚労省の指針をコピペしただけ。全く中身がない」と切り捨てた。
●転機迎える「雇用」
シンポジウムでは、個人事業主として働きながら労組を結成した当事者らが実態を報告した。
ウーバーイーツ配達員の男性は、配達中の単独事故を会社に報告すると「再度起こしたら(仕事を手配する)アカウントを永久停止する」と告げられたと述べ、「身近な恐怖でもある。幅広くヒヤリングを行い、実態を踏まえてガイドラインを策定してほしい」と発言した。
ヨガインストラクターの女性は、有料の研修を受け社内資格を取るよう突然指示されたことに疑問を持ち、対等に話し合えるようにと、組合を結成。しかし会社側はかたくなで、組合役員4人は担当クラスを失った。東京都労委に救済を求めている。女性は、妊娠・出産・介護などで契約を打ち切られる不安定な働き方だとし「安心できるガイドラインを」と思いを述べた。
連合の山根木晴久総合組織局長は最近の労働相談では個人事業主と扱われている人からの相談が増えていると述べ、「1995年の雇用のポートフォリオ(旧日経連『新時代の日本的経営』)で非正規労働者を増やしていったように、雇用から、雇用以外の労働者を増やしていくのではないか非常に懸念している」。
立憲民主、国民民主、共産、社民の国会議員らが出席し、労働者保護の網をかぶせる必要があるなどと述べ激励した。
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政府が後押しする「雇用によらない働き方」は、一部の職種の働き手の問題ではない。4月施行の改正高齢者雇用安定法は、65歳以降の就労継続の努力義務を企業に課すが、個人事業主として働く選択肢も含まれる。今や多くの労働者が直面する問題といえる。
〈写真〉コロナ禍によってセーフティーネットがないことが明らかになったフリーランス。小手先の改善では済まない(3月5日、国会内)
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