米軍の辺野古新基地建設をめぐる沖縄県と国との九つ目の訴訟で2月3日、福岡高裁那覇支部が県敗訴を言い渡した。この訴訟は、辺野古沖のサンゴ類について、沖縄防衛局の移植申請を県が許可するよう農水相が是正指示を出したことに対して、県が起こしたものだ。
判決は、かつての知事が埋め立てを承認した以上、県が移植を許可しないのは違法だという前提で書かれている。埋め立てをいったん承認しているためどの訴訟も厳しいが、県は上告した。新基地建設阻止へもがき続けるしかない。
●浦添市長選は敗北
基地をめぐる難問には限りがない。那覇軍港の浦添市への移設が争点となった浦添市長選挙は2月7日、自民・公明推薦の現職松本哲治氏が3選を果たし、移設が容認された形となった。玉城デニー知事を支える「オール沖縄」が擁立した新人伊礼悠記氏は敗れた。現職は過去最多の3万3278票を獲得、1万775票差の大差だった。
新人は那覇軍港の移設中止を前面に掲げて争点化を図ったが、現職に投票した人にとっては必ずしも争点とはならなかったようだ。政府の浦添移設方針を県、那覇市、浦添市とも容認してきた経緯があることも響いた。支援した知事の態度もあいまいで、オール沖縄の結束の弱さも露呈した。敗れるべくして敗れたように映る。
ただ、選挙後も移設をめぐる議論は続いている。「観光資源でもある美しい海を埋め立てて軍事基地を造ることは辺野古新基地と同じ」という批判は根強く、今回の選挙で決着したとは言い難い。今後の動きから目が離せない。
陸上自衛隊水陸機動団を辺野古新基地に常駐させる極秘合意があったという1月25日の報道は、沖縄に衝撃を与えた。可能性については度々指摘されていたが、2015年に日米制服組トップの間で合意していたことが明らかになったのである。岸信夫防衛相はすぐに否定したが、沖縄の人々は信じない。米軍輸送機オスプレイの沖縄配備を、世論の反発を抑えるために長年にわたって否定していたという前例もあるからだ。
水陸機動団の役割は離島奪還である。尖閣列島など離島が他国に占領された際に武力で奪還するというものだ。これは多数の有人島がある沖縄にとって、生活圏が戦場になることを意味する。島々に建設されつつあるミサイル基地が標的になることと併せ、沖縄戦を思い起こさせる悪夢でしかない。
●危険な低空飛行訓練
年末から県内各地で米軍の特殊作戦機による低空飛行が目撃されるようになり、住民は部品落下や墜落の恐怖にさいなまれている。日本の航空法を無視し、さらに指定された訓練空域も逸脱しているのに、日本政府は「必要な訓練」と主張する。低空飛行は、レーダーに探知されにくいように地形に合わせて飛行する訓練であり、これもまた沖縄が戦場となることを想定している。
コロナ禍にもかかわらず、規則を破って深夜に外出した米兵の飲酒運転や暴力事件、強制わいせつ事件などが引きも切らない。各議会の抗議決議が相次ぐ。沖縄を覆う軍事の暗雲は濃くなるばかりだ。(ジャーナリスト 米倉外昭)
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