厚生労働省内で、企業が「〇〇ペイ」など電子マネーの決済口座に賃金を振り込むことを可能にする議論が進められている。現在、労働基準法施行規則で振り込みは銀行や証券会社の口座に限られており、その枠をこうした資金移動業者に広げる。2月15日に開かれた労働政策審議会労働条件分科会で、労働側委員は「銀行などと異なり、賃金支払いの安全性が担保できるまで議論すべきではない」と慎重論を展開した。
●資金保全面にリスク
資金移動業者口座への賃金支払い解禁は、政府の「成長戦略フォローアップ」(2020年7月)で閣議決定されていて、今年度中の制度化がうたわれている。
議論は1月28日にスタートし、労働側委員は議論を進めること自体に反対を表明している。事業運営が許可制となっている銀行に対し、資金移動業者は規制の緩い登録制であり、倒産した場合の資金保全面でリスクがあるためだ(表)。不正利用された場合の補償について、銀行は預金者保護法に基づき一律に確保される一方、資金移動業者には統一したルールがなく、各社が約款(やっかん)で定めているだけと、大きく異なる。
2月15日の分科会では、公労使各委員からの質問に厚労省事務局(賃金課長)が答える形で進行。厚労省の監督指導のあり方や資金保全の仕組み、個人情報保護の度合いなどについて多くの疑問が出された。
労働側の慎重論に対し、公益側委員の一部からは「閣議決定されているのだから、議論を進めるべき。安全性や資金保全の問題より、労働者の本人同意(があること)を重視してほしい」との声が上がった。経団連選出の使用者側委員も「労働者からの一定のニーズがあり、検討することは重要」と述べたが、別の使用者側委員からは「賃金に関わる問題は労使の信頼関係の基本であり、丁寧な議論が必要」との意見が出された。
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