少子高齢化が進み、交通弱者が増える地域で住民の足を守る手段の一つとして、乗合タクシー事業が注目されている。仙台市太白区秋保(あきう)町では今年1月から、タクシー会社「秋保交通」の労使が住民組織と連携して同事業の試験運転を開始。青野邦彦社長は「採算性など課題はあるが、真の意味で地域密着のタクシー事業者になっていきたい」と語っている。
秋保の乗合タクシーは、仙台市の「みんなでつくろう地域交通スタート支援事業」を活用した取り組みで、「ぐるりんあきう」と命名した。運営主体は、町内会や小中学校のPTA、商工会の支部、秋保温泉旅館組合などでつくる「秋保地区の交通を考える会」。運行を秋保交通が担う。
住民は利用時間と目的地を予約し、タクシーが住民宅を回って乗せていく仕組み。運行エリアは町内に限定し、既存の路線バスと競合しないよう工夫した。料金は同一学区内なら一般住民で200円と低額だ。
●バスだけでは不十分
便数が減った路線バスでは利用しにくいとの声が以前から上がっていたという。ある町内会長は「三つのバス会社が運行しているが、使い勝手が悪いと町民から苦情がある」。地元の医師からも「高齢者の通院の足がなく、診療後にバスの待ち時間のため、患者は1時間も2時間も待合室にいなければならない」などの訴えがあった。
相談を受けた秋保交通の青野社長らが乗合タクシー事業を提案。2018年に運営主体となる住民組織の結成も促した。
秋保交通は、旧秋保タクシーの労働者が未払い賃金問題で裁判を闘い、勝利した後に資金を出し合ってつくった。別のタクシー会社で組合役員をしていた青野氏を社長に迎え、「自主経営」の会社として発足させた。組合は自交総連に加盟している。
●「未来の足」のために
考える会の及川純一会長は、1月の試験運転開始に当たり「バス停が遠く、通院・通学に不便な人、運転免許の返納後は不安と思っている人など、交通弱者のための『未来の足』をつくろう」と話している。
青野社長は「試験運転を始めたところ、予想より利用者がやや少ない。社会福祉協議会とも相談して、今後は介護サービスを利用している高齢者にも声をかけたい。既存のバス路線と競合しないようにすると、利用者が限られてしまうが、なんとか使い勝手のいいサービスを目指していく」と意気込んでいる。
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