郵政産業労働者ユニオンは2月5日、オンラインで中央委員会を開催し、春闘方針を決めた。有期契約労働者への不合理な格差を禁止する旧労働契約法20条裁判(最高裁)での勝利を追い風に、正社員と同じ手当や制度適用の「均等待遇要求」を掲げ、非正規社員の格差是正を迫る。
あいさつで日巻直映委員長は「コロナ禍の中で身の危険を感じながら、郵便やサービスを1日も休止せずに働く社員に(6年連続ベアゼロの)痛みを押し付けるのは絶対に容認できない」と述べ、感染症流行やかんぽ生命不正営業による経営悪化を理由とした賃上げ抑制をけん制した。
旧20条裁判の最高裁判決に触れ「非正規差別を許さず、格差是正を実現させる闘いのスタートだ。判決をおとしめる(手当廃止などの)提案を許さず、交渉に挑む。判決から3カ月経過しても制度を是正せずに違法状態を続ける日本郵便を社会的に包囲し、責任を果たさせる」と決意した。
要求は非正規社員の処遇改善として時給全国一律1500円、一時金年間4・4カ月のほか、正社員と同様の制度・手当を適用する「均等待遇要求」を掲げた。具体的には(1)育児休業(2)退職金(3)社宅への入居(4)寒冷地手当(5)夜間特別勤務手当――など。有期契約3年で無期契約のアソシエイト社員への転換、無期転換後2年で希望者の正社員登用を要求。正社員では、月額2万円のベースアップを軸に、役職登用のない一般職の基本給の大幅改善を迫る。新型コロナウイルス感染症の対策では感染した場合は雇用形態にかかわらず、特別休暇を適用するよう求める。
〈討論から〉格差是正の道遠く
有期契約労働者の処遇改善を勝ち取った旧20条裁判。判決が支給を認めた手当は、会社が制度の是正や交渉に応じない限り、損害賠償は原告のみに支払われる。そのため、全国7カ所で154人が昨年2月に同様の手当を求める2次訴訟を起こしている。
2次訴訟のうち5件で、会社側は一部の支払いに応じる意向を示した。しかし、多数派のJP労組との合意で廃止した住宅手当などは廃止以降の支払いに応じないほか、扶養手当や病気休暇は契約期間通算5年を基準に支払いを線引きするなど、最高裁判決とはかけ離れた内容だ。支払い対象の原告は半数程度に絞られるという。
ある地方の代議員は「会社が原告団や組合の弱体化を狙った分断攻撃ではないか。早期解決の方向性だが、原告団は全員で和解したい考えだ」と述べた。
●土曜休配に懸念の声
改正郵便法で今秋以降、普通郵便の土曜配達などが廃止される。国会議論では長時間労働の解消や深夜労働の改善も見込めると強調された。
東京の代議員は業務量の増える月曜日の人員増が課題になると指摘。併せて「(深夜労働の削減問題で)社長は深夜から昼へのシフト変更に丁寧な対応をするというが、非正規社員の中には深夜しか働けない人もいるし、昼に移れば収入が減ってしまう」と訴えた。
●不正営業の闇、深く
かんぽ生命の不正営業問題で処分を受けた現場社員は千人以上。そのうち25人が懲戒解雇された一方、管理職の処分は約500人で、一番重い停職処分は2人だったという。
代議員からは「現場労働者に責任を押し付けている。過度な営業ノルマから不正を強いられ、パワハラによる退職やメンタル不調の休職が起きた。経営責任と併せ、管理職の軽微な処分への追及も徹底してほしい」の声が上がった。
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