経団連が2021年版経労委報告で、ため込み過ぎとの批判の強い内部留保を正当化する主張を展開したことについて、金属労協が「現預金の保有は不可欠だが、要はバランス」とたしなめる見解を示している。個人消費増による内需拡大がなければ、企業の設備投資も進まず、経済の再生につながらないと述べ、反省を促している。
財務省「法人企業統計」によると、2019年度の企業の内部留保は475兆円で、過去最高を更新した。21年版経労委報告はコラムで、内部留保によって、コロナ禍の急激な業績悪化にも手元資金で対応でき、倒産や失業の抑制が可能になったと述べ、物議を醸している。
金属労協は、このほど示した見解で「要はバランス」と述べ、行き過ぎたため込みをたしなめている。企業が保有する現・預金の残高は十分で、コロナ禍で急激に業績が落ち込んだ後も増加している事実に言及。「財務体質は強化されても、非常時を理由に企業が現金・預金を積み上げるだけでは、経済再生はおぼつかない」と苦言を呈している。
見解は、デジタル技術進展への対応や、米中「新冷戦」の展開、脱炭素化など、設備投資や研究投資が必要な課題が山積しているとして、内部留保には一定の理解を示す。
その上で、企業が全体として投資を手控える中、「個人消費の需要拡大がなければ、こうした投資に踏み切ることも難しい。『人への投資』の遅れは、研究開発投資や設備投資の遅れを招くということも認識する必要がある」としている。
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