金属労協は1月25日、経団連の「2021年版経労委報告」に対する見解をまとめた。同報告が、業績の大幅に悪化した企業について「制度昇給の検討」を盛り込んだことを批判。例年以上に「自社の支払い能力」を重視していると指摘し、「社会的相場」を踏まえた賃上げを訴えている。
見解は、経労委報告が定期昇給の凍結を含めた厳しい対応を示唆していると述べ、「『事業継続と雇用維持を最優先』の名のもとに、安易に賃金の据え置き、定期昇給の凍結などを行うべきではない」と批判。「定昇は労使合意にもとづく制度であり、実施は経営者の責務」とくぎを刺した。
報告が従来よりも「自社の支払い能力」重視の姿勢を強めていると、見解は憂慮する。個別の企業ごとに賃金を決める傾向の強まりに対し、「賃金の社会性」を強調。「わが国全体の経済力、生産性などのマクロ経済を反映して形成される『社会的相場』を意識しつつ、産業動向や労働力需給、企業業績などの諸要素を加味して決定していくべき」とけん制した。
経労委報告は最低賃金引き上げなどの人件費の増加を口実に、中小企業の賃上げに消極的な姿勢を示す。見解は「働く者をコストとのみ捉え、付加価値の源泉であることを無視した主張であり、看過できない」と強い語調で批判した。
コロナ禍の下での日本経済の現状について、見解は「リーマンショック時のように金融システムが毀損(きそん)するような状況には至っておらず、我が国の潜在成長力は引き続き1%程度で維持されている」と指摘。近年の労働分配率の低下は生産性向上に見合った成果配分が行われてこなかったためだとし、賃上げによる経済の底上げを訴えている。
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