日本教職員組合(日教組)は1月23日、オンラインで教育研究全国集会を開いた。研究発表を行う分科会は中止し、全体集会のみ実施。シンポジウムには子どもや保護者も参加し、新型コロナウイルス感染症拡大の下での休校や授業の様子などの体験を語った。オンライン授業が急速に広まる中、格差のない学習権の保障のあり方を問い掛けた。
●子どもの意見反映を
都内の私立中学校2年生の生徒は、緊急事態宣言下の休校の間、授業は動画サイト、ユーチューブで配信されたという。わからない箇所は、理解できるまで繰り返して視聴。通学時間を勉強に当てることができ、以前よりも成績が上がった。
ところが、2度目の緊急事態宣言では、通常より15分短い短縮授業になった。「先生も焦って早口で進める。板書やプリントの配布に時間を取られてしまう。スピードが早い分、予習は必須だと感じている」
こうした状況は自分だけではないはずと、他校の友人約20人にSNSを使って様子を尋ねた。中には20分も短縮され、授業の進行に合わせて頭の中を整理できないという声もあったという。
「短縮授業で苦しんでいる子どもはたくさんいる。これは社会問題ではないか。国連の子どもの権利条約は子どもが意見を発信することも含まれている。生徒の声を取り上げる環境を作ってほしい」と訴えた。
●学習権の保障、悩ましく
昨年の突然の一斉休校要請で、学校現場は混乱を極めた。北海道の中学校教員は、文科省や教育委員会から矢継ぎ早に出される通達などに翻弄(ほんろう)されたという。「午前中の対策会議で決定したことを午後には方針転換しなくてはならない状況で、卒業式の計画は何度も作り直し。(学校現場は)上からの指示を待つことに慣れてしまったのかもしれない」と振り返った。
学校が再開されると、授業時数の確保が優先され、9月末には通常の進度に戻った。「2カ月半の遅れを取り戻すのは1年かけても難しいと思っていた。(授業のペースが)約2倍のスピードだ。子どもの学習権の保障については疑問が残る」
不登校の子がさらに登校しなくなるのではという理由で、管理職がオンライン授業の実施を見送っていたが、今は慌ただしく準備を進めているという。「オンライン授業には危険性も感じるが、学習権の保障が立ちゆかなくならないようにしたい」と力を込めた。
●分断ない学習権保障を
立命館大学の柏木智子教授は、1人1台の端末と高速回線を用いて個人の能力や適性に応じた「個別最適化された学び」を目指すという〃GIGAスクール構想〃(文部科学省)が前倒しで進められていることに警鐘を鳴らした。
同構想を安易に進めれば、経済的理由による子ども間の分断になりかねないと危機感を募らせ、こう強調した。
「多様な背景を持つ人に関心を持ち、身近な人の苦しみに気づくことも大切。格差解消や公正な民主主義につながる。困難を抱える子の生存権や学習権を保障しながら、全ての子どもの学びと命をいかに大事にしていくかが課題だ」
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