核兵器の開発、製造、保有、威嚇、援助、奨励の一切を禁じる核兵器禁止条約が1月22日、発効しました。核兵器を違法とし、廃絶へ促す国際的枠組みがスタート。核兵器保有国に圧力をかけ、廃絶への道を敷くことが期待されます。
●批准100カ国を目標に
核兵器禁止条約は、核兵器を違法とする初の国際的条約です。対人地雷禁止条約(1997年)やクラスター弾禁止条約(2008年)と同様に人道上の見地から、17年に国連で採択されました。
各国の議会が条約を承認した「批准」は51カ国。批准には至らないものの、条約に署名した国は86カ国に上ります。
ただ、核兵器保有国である米ロ中英仏や、これらの「核の傘」の下にある北大西洋条約機構(NATO)諸国、日本、韓国などは批准していません。核兵器拡散防止条約(NPT)にも加入せず、核兵器を持つイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮なども背を向けています。
こうした現状から、条約に実効性がないと保有国などは主張しますが、条約発効に貢献した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さんは「実効性がないというのは誤り。核兵器保有国が今すぐ批准しなくても、政治、経済、社会的な圧力が保有国を包囲することになる」と指摘します。
条約で違法とされた核兵器の使用は著しく困難になり、核兵器の開発や製造に融資しない金融機関の増加も見込まれます。使えない兵器に莫大(ばくだい)な費用をかけて維持・管理する愚かしさが一層明らかになり、核兵器に固執する政策を変えようという世論が高まるという指摘です。
条約発効後1年以内に第1回締約国会議が開催され、同3年以内に第2回が開かれます。ICANは2回目の会議までに、批准を国連加盟国の過半数となる100カ国に増やすとともに、核兵器に依存する国にも批准を働きかけます。
●注目されるNPT会議
米国では1月20日、バイデン政権が誕生しました。トランプ前政権は、小型化した「使える核兵器」の開発を推進、条約採択後は批准を検討する国々に圧力をかけてきました。この転換が期待されます。
核保有国の「核の傘」の下にある国々でも、オランダやノルウェー、オーストラリアなど、批准を模索する動きがあるといいます。
焦点は、5年に1度、核軍縮を話し合うNPT再検討会議。昨年コロナ禍で延期され、今年8月に米ニューヨークで開催される予定です。前回2015年の再検討会議では、核保有国に義務付けた核軍縮の進展はありませんでした。条約採択後初の会合。新たな展開が望まれます。
●「核で守られる」は幻想
日本政府は条約への不参加を表明しています。米国の「核の傘」に依存しているのが理由。唯一の戦争被爆国の政府としての姿勢が問われています。
一方、全国の約3割に及ぶ528の地方議会が条約の署名・批准を日本政府に求める意見書を採択(22日現在)。締約国会議へのオブザーバー参加を求める声も強まっています。
川崎さんは「日本は米国の『核の傘』に守られていると言うが、あのトランプ前米大統領の指先一つで核兵器が発射されたかもしれない状態で、日本や世界の平和が守られていたと考えるのは幻想です。核兵器廃絶こそ現実的。日本と朝鮮半島を見れば、日本、韓国、北朝鮮が条約を批准し、事実上の非核兵器地帯にしていくことが大事です」と話します。
日本や東北アジアの将来を見据えた議論が求められます。
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