大阪府関係職員労働組合(自治労連加盟)は1月15日、保健師の増員を求めるネット署名約6万1千筆を吉村洋文大阪府知事と田村憲久厚労相に提出した。大阪府は昨秋以降、新型コロナウイルスの感染者が急増し、累計死者数は全国最多(14日現在)。医療機関同様に保健所も逼迫(ひっぱく)した状態だ。提出後の会見で保健師らが窮状を訴えた。
大阪府内の保健所は約20年の間に61カ所から18カ所へ再編統合が進んだ。保健師らは条例による採用抑制で人員不足に苦しんできた。感染症の流行で多忙化に拍車がかかり、中には時間外月160時間の職員もいるという。府職労は感染症など非常時に対応可能な職員体制や、長時間労働の解消を要求してきたが、大阪府は定数増を行わない考えを示している。
府職労は連日深夜まで働く保健師の声や、多岐にわたる「保健所のシゴト」をツイッターで拡散。ネット署名を10月から呼びかけ、(1)大阪府の保健師の計画的な採用と増員、保健所職員の定数増(2)都道府県の保健所の数と機能を強化するための施策――を全国に訴えてきた。
会見で小松康則委員長は早急な増員と併せ、計画的な採用と育成が不可欠だと強調した。「大阪府は人口当たりの職員数が全国で最も少なく、全体が過酷な労働を強いられている。過剰な人員削減は公的な支援が必要な人や住民へのしわ寄せを生む。保健師ら職員が使命感を発揮できるよう保健所の機能や体制を強化してほしい」と述べた。
●元日明け方も患者対応
保健師の女性は大みそかも深夜まで働き、床に就いた元日の午前3時頃に自宅療養者から連絡が入り、対応に追われたという。病状確認や搬送先手配など、自宅療養者に関する業務が多い。2日連続の休日を取得できない状況が10カ月も続く。「公衆衛生の人材育成を訴えてきたが、心配していた通りになってしまった。住民からの相談に対応しきれない状態だ。疲弊感と葛藤を抱え、体にむちを打って働いてきた」と声を詰まらせた。
感染した30代の男性に療養先のホテルを案内したところ、「部屋数は足りているのでしょうか。自分は一人暮らしで食料もある。症状が悪い人を優先してください」と言われたという。女性は「こういう住民がいて医療体制が成り立っている。医療機関とともに、感染症の防波堤となって頑張りたい。感染症は今後も起きる。コロナ禍での付け焼き刃ではなく、先を見据えた体制を構築してほしい」と語った。
●トリアージを問題視
NPO法人大阪難病連の松本信代理事長は「難病を患っている人は基礎疾患保有者で、感染すれば重症化する。致死率が高く、恐怖におびえながら自粛生活を送っている。マスクなどの調達を相談したくても保健所の電話がつながらなかった。人員削減がこのような非常事態を招いたのではないか」と問うた。
医療資源や体制の制約によって、患者の優先順位を付けるトリアージに触れ「命の選別はあってはならない。病気は人を選ばない。難病患者は2~3日も待機療養できない。すぐに対応を」と訴えた。
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