新型コロナウイルス感染は、世界中で広がり続けている。2020年、コロナ封じ込めのために各国でロックダウン(都市封鎖)やさまざまな規制が行われ、サプライチェーンの停滞や観光客の激減などで世界経済は大きく縮小し、世界の多くの分野で企業活動は深刻な減収に直面している。そんな中で唯一、飛躍的に売り上げを伸ばし、大きな利益を得ている分野が、IT、プラットフォームビジネスである。
IT企業の創業者ら世界のトップ10に入る米国人の資産は、2020年のコロナ禍で多くの事業者が苦境にある中、逆に急増している。具体的には、トップはアマゾン・ドット・コムの最高経営責任者(CEO)であるジェフ・ベゾス氏で、20年には純資産が635億ドル(6・5兆円)も増えて1780億ドル(18・3兆円)となった。
第2位はマイクロソフト社のビル・ゲイツ氏で、35億ドル(3600億円)増えて1170億ドル(12兆円)に達した。グーグルやフェイスブックなど大企業のトップの純資産額も軒並み増加した。庶民や中小零細企業からすれば途方もない金額で、コロナ禍の中で、格差はますます拡大しているのだ。
●労働者を食い物に
確かに、コロナ拡大の中で、オンライン化が進んだことは事実で、これらIT企業が業績を伸ばすことは必然でもある。しかし問題は、業績を伸ばした企業が、労働者に対して正当な賃金や待遇を保証してきたのか、という点だ。答えは「ノー」である。
20年11月下旬、「アマゾンは正当な賃金を払え」という国際キャンペーンが始まった。これは、世界中でビジネスを展開するアマゾン社で働く労働者や、彼らを支援する団体、消費者などによるものだ。キャンペーンの主張によれば、コロナ禍の下、同社は1兆ドル(103兆円)規模の巨大企業に成長した。しかし、倉庫作業員たちは、生活維持に不可欠なエッセンシャルワーカーとして命を危険にさらしているにもかかわらず、適正な給料という当然の権利を要求するだけで脅迫や報復に遭っている。
それだけでなく、同社は納税を怠っている。19年には本社を置く米国で米国連邦法人税をたった1・2%しか支払っていない。さらに、同社が生活必需品のいくつかを不当に値上げした事実について、米国NGOが告発のレポートを出している。つまり、コロナ禍の中で、労働者や消費者をいわば「食い物」にして、一部のトップだけが肥え太ってきたというわけだ。
●利益に応じた還元を
キャンペーンの要求は次の通り。(1)倉庫で働く従業員の給与を企業の利益増加に応じて増額し、労災や繁忙期におけるボーナスの支給(2)安全確保、病欠の延長を認めるなど労働環境の改善(3)全従業員の雇用の安定と不安定雇用、えせ自営業、契約社員制度を廃止すること(4)組合つぶしをやめ、組合と交渉することなど、労働者の普遍的権利の尊重(5)気候危機に対応する持続可能な経営(6)各国で納税することや、独占的な行為をやめること、監視技術の開発・販売をやめることなど、社会への還元――。
これらの要求は包括的であり、コロナ以前から問題となってきたグローバルなプラットフォーム企業が生み出してきた諸課題を根本から問う内容となった。キャンペーンは世界各国に広がり、デモや要請文の提出など大きく広がっている。
世界の多くの国の国会議員が、連名でアマゾン社に上記内容の要請を行っている。日本では残念ながら国会議員の動きはまだないが、東京管理職ユニオンのアマゾン支部が積極的にキャンペーンの拡散を行っている。
国際キャンペーンではウェブサイトから団体・個人での賛同も受け付けている。ぜひ多くの方に参加していただきたい。(アジア太平洋資料センター共同代表 内田聖子)
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