製造、流通、サービス、食品関連の労組でつくるUAゼンセン(179万人)は12月3日、カスタマーハラスメント(カスハラ、顧客による悪質クレームなどの迷惑行為)についての調査結果を発表した。直近2年以内でカスハラ被害に「あった」と答えたのは56・7%。そのうち、新型コロナの影響と考えられる被害は4割弱で、全体の5人に1人に上る。
●ドラッグストアで約7割
調査は7~9月に実施した。カスハラ被害について、流通・サービス業で働く組合員を対象とし、233組合の2万6927人が回答した。
業種別に見ると、新型コロナの影響によるカスハラが「あった」と答えたのは、ドラッグストア関連で66・6%、スーパー43・0%、総合スーパー40・7%。小売り業が上位を占めた。「菌がうつるから近寄るな」と暴言を吐かれるなどの被害が寄せられている(表)。
直近2年以内で被害にあった回数は1~5回が43%、6~10回が8%、11回以上は6%にも上る。被害を受けた後の心身の変化を聞いたところ、「嫌な思いや不快感が続いた」は5割、100人(0・7%)が「心療内科などに行った」と答えた。
企業の対策については、43%が「特に対策はされていない」と答えている。
●新たな消費文化を
顧客に聞いた調査結果も同日発表した。5月下旬に実施し、15~69歳の男女3138人が回答した。「クレームを見聞きした」と答えた人の平均回数はコロナ禍以前(19年5月~20年1月)が4・4回なのに対し、コロナ禍(20年2月以降)は4・7回と増えている。見聞きしたクレーム行為を「不愉快」と感じた人は95%に上り、必要な対策として「法律による防止」「消費者への啓発活動」と答えた人がそれぞれ5割を超えている。
同日、国会内で報告集会を開いた。松浦昭彦会長は「新型コロナの影響によるカスハラを5人に1人が受けている。コロナ禍が続く中で今、対策の手を打っていかなければならない」と語った。調査分析をした桐生正幸東洋大学教授は「お客様は神様ではない。労働者と消費者は対等な立場であるという新しい消費文化をつくっていくことが、この問題に取り組む上で重要だ」と述べた。
UAゼンセンは調査結果を基に法制化に向けた要請活動や、企業労使でカスハラ対策を強化していくことを求めていく。
〈写真〉緊急報告集会には多くの国会議員が参加した。あいさつする松浦会長(12月3日、国会内)
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