望月道子さんは現在、神奈川2陣訴訟の原告団長を務めている。2014年に提訴し、原告57人のうち被災原告は44人。係争中に14人が亡くなった。「判決を見ずに亡くなった方の無念さとともに裁判を闘っている。私は最後まで生き抜きたい」と決意している。
●「みんなを救うことに」
裁判への参加を誘われた時は悩んだという。娘からも「裁判して何になるの?」と反対された。
「83年の当時、建設業界で女性の個人事業主はほとんどいなかった。男社会の中で働き、ずっと強く生きてきたから、(人前で病状を語る)弱い姿を見せたくなかった」
それでも裁判を決意したのは、神奈川土建茅ケ崎寒川支部の労組書記から「裁判は望月さんのためであると同時に、みんなを救うことになるんだよ」と言われたからだ。
神奈川2陣の最初の原告団長だった前川貫二さん(電工)、その次に団長を務めた中川富衛さん(配管工)も亡くなった。3人目の原告団長にと言われ、2人の最期を思い「裁判の途中でどんなに無念だっただろう。最後まで生き抜いて2人の思いを受け継いでいこう」と決めた。
●就労形態で線引くな
今年8月、2陣の高裁判決(二審)で、神奈川訴訟で初めて「一人親方への国の責任」が認定された。神奈川1陣は、二審でも一人親方への国の責任が認定されないまま、最高裁にかかっている。
望月さんは「労働者も、一人親方も、個人事業主も、同じ現場で同じ仕事をして、アスベストを含んだ粉じんを吸い込んだ。線引きをしないでほしい」と訴える。
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望月さんは建設アスベスト訴訟の原告になってから積極的に組合活動に参加するようになった。「組合活動の中で沖縄・辺野古の新基地建設や東京電力福島第1原発事故の問題などを深く知り、私の世界が広がった。建設以外の多くの人たちともつながって、全面解決のために頑張りたい」
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