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    コロナ対応へ地域医療拡充を/自治労連が提言案/深刻な人員不足の実情訴え

     自治労連は11月30日、新型コロナウイルス患者を受け入れた自治体病院の実態調査と、地域医療体制の拡充を求める政策提言案を発表した。医療従事者は人員不足が続いており、感染の恐れを感じながら働かざるを得ない状態だと訴えた。提言案は、地域医療を崩壊させないため、新型コロナに対応できる医療機関の確保や財政保障、人員体制と労働環境の整備などを求めている。

     

    ●増員ではなく応援

     

     実態調査(中間報告)は4月時点の状況を調べるため、7~8月に実施。労組を通じて40病院から回答を得た。

     それによると、通常時の人員が「全く足りない」との回答は15%。感染が拡大し始めた4月になって25%へアップした。不足を補った方法では、77%が「他部署からの応援」だったという。自治労連医療部会の鮫島彰議長は「増員ではなく、一般病棟から応援を出す形が多い。一般病棟の方は以前より少ない看護体制となり、全体が大変な状況だった」と指摘する。

     地域で感染のクラスターが発生して、対応できなくなるケースもある。鮫島議長は「ある地方では11月以降、市内で複数のクラスターが発生して患者が増加したため外来診療を中止し、新規受け入れができなくなった。周辺の医療体制も厳しく、地域医療の崩壊をとても危惧している」と語った。

     

    ●強い精神的ストレス

     

     4月時点で「仕事上、精神的にストレスを感じたか」を尋ねたところ(複数回答)、「強く」「まあまあ」を合わせて95%が感じていた。内訳では、(1)感染に対する不安(90%)(2)先の見えない不安(76%)(3)極度の疲労(28%)・仕事の質(28%)――が上位を占めた。

     その後、10月時点でも調査を行い、一部の病院から回答を得たが、ストレスのトップは依然「感染に対する不安」だった。

     自由記述には「先が見えない不安から、看護師の中途退職や高齢医師の退職が相次いでいる」との声も寄せられている。

     

    ●国の無策ぶりを批判

     

     高柳京子副委員長は同日の会見でこう語った。

     「国は感染を止める有効な対策を取っておらず、あまりにも無策だ。長期化すれば、現場は持ちこたえられない。これまでの医療費削減政策と自治体病院の統廃合計画の誤りは明らか。地域医療を充実させる方向へ転換すべきだ」

     

    〈写真〉会見に臨む自治労連の本部役員(11月30日、都内)