今年4月にスタートした自治体の会計年度任用職員制度。任用(雇用)期間が「上限1年」となり、再度任用(事実上の契約更新)は可能とされたものの、3年や5年で打ち切りというケースが少なくない。11月22日に東京で開かれた「第12回なくそう! 官製ワーキングプア集会」では、こうした短期雇用で「婦人相談員」など専門性や継続性が求められる職の質が維持できるのかと、疑問の声が上がった。
自治体で働く臨時・非常勤職員の大半は会計年度任用職員に移行した。自治労調査によると、雇用期間について上限を設けている自治体が約7割。期間は「1年以下」が約2割、「3年」が3割弱、「5年」が1割強という内訳だ。
これまでは、非正規保育士などが6カ月や1年の契約を更新し続ける形で10年以上働くケースも少なくなかった。新制度によってそうした「長期雇用」が制約されるのではないか、との懸念が強まっている。
●相談受ける側も不安定
公立の女性関連施設で働いた経験があり、現在は大学の非常勤講師を務めている瀬山紀子さんは、集会でこう述べた。
「公共サービスを必要としている生活困窮者や、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者、失業者については、長期的に支援していく必要がある。相談を受ける側が1年ごとの任用で『来年はどうなっているか分からない』という状態だと、責任を持った対応ができるのかどうか」
その上で、会計年度任用職員制度について「10年以上働いてきた『ベテラン非正規』を煙たい存在だとして、なくしてしまいたいという制度に思える」と指摘。短期間で雇用を切られ、専門性や継続性を担保できない職員と、公共サービスに頼らざるを得ない人々のどちらも共倒れする恐れがあると語った。
低処遇の問題も影を落とす。都内の自治体で婦人相談員として働く女性は「常勤職は2、3年で転勤するため、専任の人は少ない。第一線で働いている非正規は、ダブルジョブをしないと暮らしていけない。これでは次の世代に仕事を引き継げない」。
ジャーナリストの竹信三恵子さんは、自治体職場から「ベテラン非正規」が消えていくと、次には業務の外部委託化が進むのではないかと懸念を表明した。「委託化で自治体の中に蓄積すべきノウハウが外部に流出し、自治体本体が空洞化する」と述べた。
〈写真〉東京集会は「コロナがあぶり出したもの――公共サービスの脆弱さと非正規労働者」をテーマに開かれた(11月22日、都内)
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