日本労働弁護団は11月13、14の両日、オンラインで総会を開いた。コロナ禍で働き手も利用者も増加したウーバーイーツなど、急速に広まりつつある〃雇用によらない働き方〃に対し、労働基準法の適用を求める議論を本格的に開始した。
●現行基準で対応できず
総会では「〃雇用によらない働き方〃と労働者概念に関する提言」の1次試案が提案された。
厚生労働省は、請負などの〃雇用によらない働き方〃(雇用類似)で働く人の労働法上の保護やその対象者の範囲を検討課題としている。労働基準法が適用される労働者と同じ労働実態があるにもかかわらず、権利が擁護されないケースも多いとされる。同弁護団は研究会を設置して約4年間、諸外国の事例の検討など議論を重ねてきた。
試案を報告した木下徹郎事務局次長は、現在運用されている労働者性の判断基準は35年前に旧労働省内の研究会(労基研報告)が示したもので、裁判でも基準になっていると説明。企業の指揮監督の下、場所や時間の管理を受け、拘束性が強い働き方が主流だった時代と今では状況が異なるという。「ネットの発達で、時間や場所を拘束されず、表面上は指揮監督が緩くなるなど、働き方の複雑化が加速した。(IT企業などの)プラットフォーマーの登場でさらに拍車がかかった。現在の基準では対応できていない」と述べ、見直しの意義を強調した。
試案は、明らかな独立事業者を除き、労務を提供し、その対価の報酬を得ている人を労基法上の労働者と捉え直すよう、検討を促している。
●労災適用を要望
〃雇用によらない働き方〃で注目されている料理配達のウーバーイーツ。配達員らは、昨年10月に組合を結成すると、事故状況と被害の調査に取り組み、ウェブ上に公開。厚労省に労災保険の適用を求める要望書を提出した。要求議論では、一人親方などに適用され、実現可能性の高い労災保険の特別加入を求める意見もあったという。
川上資人弁護士は「会社は配達員を働かせて利益を得ているのに、(会社が)保険料を負担せずに済む特別加入を求めるのはおかしいという意見が出て、(特別加入ではなく)労災保険の適用を求めることでまとまった。労務提供で対価を得ている人は対象となるよう要望した」と語った。
●非正規雇用の入口規制を
水野英樹幹事長は、1年間の活動報告で新型コロナウイルス感染症に触れ「(実態として)休業手当が賃金月額の5割程度を割り、労働者は生活できない実態が明らかになった。大企業の新卒採用の中止や解雇、退職強要など、雇用情勢は悪化している。雇用調整助成金の特例措置もいずれ終わるだろう。便乗解雇と闘う必要がある」として、労働組合などとの連携強化を呼び掛けた。
有期雇用労働者の不合理な格差を禁止した労働契約法20条裁判で、退職金や賞与の支給を一切認めなかった最高裁判決を批判。パート・有期雇用労働法や同一労働同一賃金ガイドラインの流れに逆行すると指摘した。
その上で、地方自治体で働く臨時・非常勤職員に導入された会計年度職員制度について、「期末手当の対象になるフルタイムとパートで格差が制度的に残り、不合理極まりない。任用期間も1年で不安定だ。安定した働き方を保障する制度を目指したい」と述べ、弁護団が提言してきた、例外的に非正規雇用を認める入口規制の実現を改めて求めた。
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