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    コロナ禍の長時間労働を懸念/厚労省/過労死防止シンポを開催

     厚生労働省は過労死防止を呼びかけるシンポジウムを11月11日、都内で開いた。過労死等防止啓発月間に合わせ、各都道府県で開催。新型コロナウイルス感染症に関わる長時間労働やメンタル疾患の問題についても報告された。

     

    ●テレワークへの配慮を

     

     厚労省労働基準局の石垣健彦総務課長が今年度の「過労死白書」について報告した。昨年度の民間労働者の労災補償認定件数は、脳・心臓疾患が216件(22件減)、精神障害が509件(44件増)だった。医療・福祉業種では、精神的緊張を伴う業務の負荷、悲惨な事故・災害の体験や目撃が多いのが特徴。

     全業種の自殺事案では、専門職や管理職が40・1%。うつ病などの発症から死亡日までの日数は29日以下が51・5%に上り、医療機関への受診歴があった人は39・5%にとどまった。

     「過労死等防止について考える議連」会長の馳浩衆院議員は「残されたご家族や職場の同僚への心理的な影響など、過労死には二次被害もある。過労死の認定作業はエビデンスを重ねた上で常に見直さなければならない。法改正の必要性なども見定めながら、厚労省を督励していきたい」と述べた。

     過労死防止全国センターの川人博弁護士は、テレワークに関する相談に触れ「通勤時間がなくなった分、そのまま労働時間になるケースが多い。ZOOMを使ったネット会議が休みなく設けられるなど、過密度も問題だ。労働時間管理が曖昧で、残業代申請ができない。自宅で仕事中に倒れたケースもある」と指摘した。

     その上で、「デジタル革命が新しい労働形態を生む中で、感染症の流行が起こり、変化が加速した。デジタルの性能が上がれば上がるほど、人間がそれに合わせる形になる」と述べ、就労環境や業務時間外にメールを見ない権利など、健康に配慮したルールが必要だと強調した。