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    「雇用も、賃上げも」/連合春闘討論集会/要求基準は引き続き検討

     連合は11月5日、春季生活闘争の方針を話し合う集会を横浜市内で開き、神津里季生会長は「雇用も賃上げも、双方ともしっかり反転させる」と強調した。連合全体で取り組む賃上げ要求基準の具体的な数字は提案されず、引き続き検討することとなった。

     新型コロナ感染拡大で、今年度の第1四半期の実質経済成長率は戦後最大の落ち込みを示し、いまだ収束の見通しが立たないなかでの春闘となる。

     近年は定期昇給2%に賃上げ2%程度の計4%程度を掲げてきたが、今年は業績のばらつきが大きく、どのような闘争体制を組むのかが注目されている。

     神津会長はあいさつで、「雇用の問題と賃上げを二律背反でとらえるべきではない」と指摘。1990年代半ば以降、賃金は低下、非正規労働の増加など雇用の質が悪化したことを振り返り、「雇用も、賃上げも、双方ともしっかりとしたものに反転させる、その正念場に立たされている」と述べた。

     20闘争での中小企業や非正規労働者の底上げ・格差是正の流れが「連合の中にとどまっている」とも述べ、引き続き「分配構造の転換につながりうる賃上げ」を求め、社会への波及を追求する姿勢を示した。

     

    ●中小産別が数字求める

     

     基本構想は、新型コロナ禍で明らかになったセーフティーネットのぜい弱さを克服し、経済の自律的成長をはかるためにも賃上げが必要と強調している。

     しかし、討論集会でも、賃上げの引き上げ率の数字は空欄のままで具体案は示されなかった。コロナ禍で「数字をいくらにするのかは大変難しい課題」として、経済情勢を見極めた上での引き続きの検討課題とした。

     討論では、中小労組でつくる、自治労全国一般、JAM、全国ユニオンが、「昨年を下回らない数字を」と、連合として統一要求基準を示すよう求めた。

     業績が特に厳しい、航空、観光・宿泊、鉄道の産別が、現状を報告。中期的な視野を持ち、雇用の維持、めざすべき賃金水準への到達、格差是正に取り組むなどの見解が示された。

     方針は、19日の中央執行委員会を経て、12月1日の中央委員会で確定する。

     

    〈メモ〉正念場迎える春闘

     

     コロナ禍で大幅に経済が落ち込む、かつて経験したことのない状況下での春闘となる。一昔前であれば、早々にベアゼロ春闘に流れたであろうが、今回は少し様相が異なる。

     討論集会当日の会見で、経団連が一律のベアに否定的な見解を示したことを問われ、神津会長は「日本経済全体のことを考えたコメントをしてほしい」と苦言を呈した。

     90年代半ば以降、先進国で唯一賃金が低下。コロナ禍で失職と同時に生活困窮に陥る人々の存在が明らかになる一方、企業の内部留保だけが毎年史上最高を更新する、ゆがんだ経済となった。日本の社会保障を維持し、分厚い中間層を生み出すためには、分配構造の転換が必要だという認識は、今や労働組合だけのものではない。

     細々とながらも続いた、14闘争以来の賃上げの流れを継続できるか。同会長が「正念場」と述べたように、賃上げが日本経済・社会の課題であるという認識をどれだけ広げ浸透させられるかにかかっている。

     

    〈写真〉連合春季生活闘争中央討論集会は、リモートによる参加と組み合わせて行われた(11月5日・横浜市内)