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    沖縄レポート/尖閣「有事」の可能性は/米・中のはざまで考える

     沖縄周辺の海がきな臭い。尖閣諸島沖を中国海警局の船が連日航行し、与那国島、宮古島に続き石垣島にも新しい自衛隊基地が造られつつある。尖閣諸島は日本の実効支配下にあるとしても、中国も自国の領土だと言っているのだから、駆け引きが続くのは当然であろう。尖閣「有事」など迷惑至極であり、あってはならない。

     

    ●米軍の新たな作戦構想

     

     1カ月ほど前、今年「沖縄米軍基地全史」(吉川弘文館)を刊行した野添文彬沖縄国際大学准教授の勉強会に参加して、米中対立と米軍の戦略について教えてもらった。

     オバマ政権時代の「エア・シー・バトル」構想は、中国との間で何かあったら、グアムまでいったん下がって長距離兵器で反撃するというものだった。そのため、名護市辺野古の新基地の必要性に疑問が呈されてもきた。

     しかし、野添准教授によると、状況は変わり、米国の軍事的優位は部分的に喪失しているという。海軍艦船の数は中国が米を凌駕(りょうが)し、地上配備の弾道ミサイルや、巡航ミサイルの数も上回る。射程距離も伸び、グアムも射程に入った。

     そこで、米軍は新しい作戦構想を展開し始めた。(1)米国の軍事的優位(空・海)を前提としない(2)陸上兵力をより重視(3)厳しい環境下で「一時的な優位」を作り出す(4)固定的で大規模な基地に依存しない、分散化された機動的な兵力を重視――というもので、キーワードは「分散化」である。一部で撃破されても、ほかで一時的な拠点を確保して反撃していくというもので、一定の犠牲を覚悟した局地戦構想ともいえる。

     「エア・シー・バトル」が抑止力を前面に出した血を流さない構想であるのに対して、「分散化」は血を流しながら戦うマッチョへの回帰と言えそうだ。海兵隊にとっては組織延命策でもあろう。野添氏によると、陸海空の統一された作戦構想には至っておらず、各軍がそれぞれに取り組んでいるという。

     

    ●軍事力依存の危険性

     

     民間の空港・港湾の軍事利用も当然想定しているはずで、辺野古新基地も新たな拠点となるのだろうか。「分散化」が沖縄の基地負担減になるのか不透明だが、戦争を想定しているのであれば沖縄にとっては悪夢でしかない。戦場になる危険は日本本土も大差ない。

     日本国民の多数が日米同盟と核抑止力を支持している現実がある。核兵器禁止条約が指摘するように、軍事力に依存した抑止力信仰は危険で愚かだ。しかも、地球温暖化などの大問題が目の前にあるのだから、なおさらだ。戦争を想定した軍人たちの構想にストップをかけ、生活者の視点から平和構想を現実化していくことが急務だ。状況は切迫している。(ジャーナリスト 米倉外昭)