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    労働時評/JAL争議、解決へ前進の兆し/初の超党派院内勉強会も開催

     日本航空(JAL)の不当解雇撤回闘争が10年を迎える。9月に初めて与野党の超党派による「院内勉強会」が開かれ、支援が表明された。苦節10年。国際労働機関(ILO)も含め、JAL争議は新たな前進の兆しを見せている。

     

    ●与野党が解決支援

     

     主催はJAL不当解雇撤回争議団。4党11人の国会議員と沖縄の風などの議員秘書ら39人が参加した。

     立憲民主党の福田昭夫衆院議員は「強制解雇した何倍も新規採用し、財源的に可能でありながら再雇用しないのはとんでもないことだ。雇用の解決へ相談していきたい」と支援を表明。

     自民党の山本朋広衆院議員は「JALの資金は潤沢だ。JALと政府にどうアプローチしたら適切に対応できるか、できることをさせていただく」と語った。

     共産党の穀田恵二衆院議員は「JALは公的支援を受けながら165人の憲法違反の解雇を行った。コロナ禍でも国民的意義をもつ争議解決を」と発言。同党の高橋千鶴子衆院議員も「4次のILO勧告は政府も無視できない。超党派ILO議連で政府に実行を迫ることも検討」と語った。

     社民党の福島瑞穂参院議員は「超党派の議員で力を合わせ解決していきたい」と支援を表明した。

     内田妙子・客室乗務員争議団長は「院内勉強会は初めての開催。JAL解雇争議の年内解決に向け、与野党各議員から積極的な支援と協力を表明されたことに大いに勇気づけられた」とまとめた。神奈川の支援組織の代表は超党派の集いを「よかった」と述べ、独自に地元選出の超党派議員へ要請を行っている。

     

    ●放漫経営のつけ

     

     JAL争議は、企業・株主の利益最優先・働く者の権利破壊など、新自由主義的な解雇を撤回させる象徴的な闘いともなっている。 

     JALの経営破綻は政府の圧力によるジャンボ113機もの大量購入や、空港乱造による赤字路線拡大など乱脈・放漫経営の結果といえる。

     会社更生下で史上最高益を上げながら、委員長など組合活動家を狙い撃ち解雇し、10年12月31日の大みそかに165人(パイロット81人、客室乗務員84人)の整理解雇を強行した。

     最高裁は15年に整理解雇4要件(解雇回避努力義務など)を踏まえない解雇容認の不当判決を下した。一方、16年には解雇の過程で団結権侵害の不当労働行為があったとして、「憲法28条違反、労組法7条違反」の違憲・違法解雇と断罪した。

     

    ●被解雇者の採用はゼロ

     

     乗員、客室乗務員の組合は解雇問題統一要求として、「希望者全員の復職」「復職がかなわない者の地上職勤務」や補填(ほてん)・解決金などと併せ、労使関係正常化と安全運航推進などを決定し、闘争を展開している。

     JALは18年、「整理解雇問題の解決」「非解雇者も採用応募の対象」などの経営方針を発表し特別協議も始めた。しかし被解雇者が応募しても全員不採用であり、解決への特別協議も14回行われたが、組合の解決要求には応えていない。

     

    ●ILOも解決交渉を注視

     

     ILOは、解決へ4次の勧告を日本政府に行っている。とりわけ問題にしているのは、JALが大量解雇後も9年間でパイロット386人を採用しながら、争議団の採用は地上嘱託社員に1人だけ。客室乗務員は6205人を採用しながら被解雇者の採用がないことだ。ILOは優先的再雇用を勧告している。

     さらにJALが18年に「解雇解決に踏み出す」と経営方針を発表しながら、復職希望者が応募しても全員を不採用としたことに驚きを表明。昨年10月の争議団訪問で新たな事実を知ったILO高官らは「勧告に基づき解決するまで注視し続ける」「引き続き情報提供を歓迎」と新たな対応を示した。JALは解決を迫られている。

     

    ●全国で多面的な支援

     

     新たな変化は、パイロットや客室乗務員の争議団代表らが組合の特別執行委員となって交渉に参加していること。会社は交渉を拒否できなくなっている。ILOは会社の不誠実団交には労働委員会活用も勧告し、にらみを利かせている。

     争議支援も弱まることはない。国民支援共闘には212団体が参加し、北海道から九州まで全国に33組織が結成され、支える会も700団体に上る。

     神奈川では、支援連絡会のビルの外壁に掲げられた「JALは五輪前に165名の解雇争議を解決せよ」と訴える縦17メートルの大きな懸垂幕が人目を引く。各支援共闘と争議団、組合はJAL本社・支店や全国の空港、駅頭宣伝、オリ・パラ組織委員会、経団連、政府、超党派議員要請など争議解決へ全国で多彩な行動を展開している。

     

    ●JALは有言実行を

     

     山口宏弥・パイロット争議団長は「航空の安全や職場の人権擁護など、もの言う組合・労働者を排除する組合つぶしは許せない。世論を広げ、解決へ勝つまで闘う」と語る。

     内田・客室乗務員争議団長は「解決要求を踏まえた解決なしには争議は終わらない。職場はコロナ禍で雇用不安を感じているが、会社への不信があり、信頼回復へ争議解決が重要だ」と訴えている。

     JALはコロナ禍で「雇用は守る」と株主総会などで公言している。有言実行が問われている。

     今、雇用、人権、安全を優先した新たな経済社会が求められている。LAL、政府とも新自由主義の政策を改め、憲法違反の不当解雇の早期解決に踏み出す時である。(ジャーナリスト・鹿田勝一)