11月1日に住民投票にかけられる、大阪市を廃止し四つの特別区とする制度案について、連合大阪は「廃止・分割阻止」の取り組みを展開している。田中宏和会長は住民サービスの低下に危惧を表明。新型コロナによる困窮者対策に力を集中すべき時に、制度変更を急ぐことについて深い憂慮を示す。残る一週間、大阪市在住の約10万人の組合員に制度案の問題点を伝え、反対票を投じるよう呼び掛ける。
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そもそもなぜ住民投票が必要なのか。大阪市の廃止で政令指定都市からの格下げとなり、住民サービスが悪くなる可能性が高いから住民投票を法律(大都市地域特別区設置法)で定めている。東大阪市などの中核市が政令指定都市になるのであれば、わざわざ住民投票を行う必要はない。
制度案では、いずれ特別区の財源不足が起きるだろう。新たな制度に移行する2025年1月1日時点では一定程度確保されるだろうが、そのあとは特別区長の判断に任されることになる。
財政シミュレーションからわかるように、大阪メトロの配当がなければ特別区の財政は成り立たない。コロナ禍で業績が悪化している下で、住民サービスが今後も維持されるという根拠は乏しい。
特別区は、国が定める一律の行政サービスの水準を下回る可能性もある。制度的に厳しいというのが私たちの見方だ。さらに特別区設置のための運営費用は約1300億円といわれている。これが特別区の財政に重くのしかかり、住民サービスの低下が懸念される。
●急ぐべきは安全網整備
新型コロナ禍の最大の課題は、社会的に立場の弱い人へのしわ寄せにある。10月9日までの全国の労働局の集計によると、解雇、雇い止めされた人は見込みを含めて6万5千人で、非正規労働者は同3万1千人にも上る。東京に次いで多いのが大阪だ。大阪は子どもの貧困が多い都市でもある。今後深刻化する恐れが大きい。
こうした課題の解決こそ行政は最優先すべきだ。困窮する人々の実態把握と緊急の解決策に大阪府・市が中心になって取り組み、セーフティーネットを強化することが求められる。
それなのに、コロナ禍で住民への十分な説明が制約されている中、制度変更を急いだ。極めて残念と言わざるを得ない。
●連合総体で取り組みを
投票率が一つの重要なポイントだ。最低でも前回と同じ66・8%、それを超えるぐらいの投票を呼び掛けていきたい。大阪の将来世代に責任を負う投票となる。正確な情報を提供し、冷静な判断を求めていく。
連合大阪の組合員のうち大阪市民は約10万人いる。大阪市廃止の制度案の問題点を知らせる組織的な取り組みを展開していく。
連合が9、10月に開催した機関会議で私は、連合大阪の取り組みへの支援を呼び掛け、神津里季生会長が連合としての支援を約束してくれた。本当にありがたい。既に連合東京をはじめ多くの仲間が激励のメッセージを寄せ、大阪市在住の知人を紹介してくれている。
残る一週間、何としても大阪の将来のため、働く者、生活者のための負けられない闘いだ。次世代への責任を果たすという強い思いで大阪市廃止・分割阻止に取り組みたい。ぜひとも全国の労働組合、働く仲間の皆さまのご支援をお願いしたい。
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