山本幸三・元地方創生担当相(衆院議員、自民党)は10月10日、北九州市内で「最低賃金について 今こそ、格差是正・地方創生へ」と題する講演会(山本幸三北九州事務所主催)を開き、今年度の最賃改定で「引き上げ凍結」を国が示したことに遺憾の意を表明した。同氏が主宰する「地方創生塾」の一環。労組組合員や地元後援会員も参加した。
●政権政党の責任として
山本議員は、地方創生担当相在任中(2016~17年)に多くの地方自治体首長と話す中で、東京一極集中の弊害を痛感したが是正できなかったと述べ、「大臣退任後に考えた結論が地域別最賃一元化と最賃を引き上げることだった。19年2月に自民党内で『最低賃金一元化推進議員連盟』を立ち上げた」と話した。
昨年のメーデーで共産党の志位和夫委員長が「最賃を1500円に」と訴えたことに触れ「共産党も追いついてきたかと思った。経済問題では自民党、共産党(と言っている場合)ではない。一番良い政策を提案するところが勝つ。それをやるのは政権政党だ。日本のために、弱い人のためにやらなければならない」と語った。
●賃上げで社会保障維持
英国が今年4月、コロナ禍でも6%余りの最賃引き上げを予定通り行ったことに言及し、こう述べた。
「日本の情けなさはなんだ。全世代型社会保障検討会議(6月)で最賃引き上げ『凍結』の姿勢が示されたと知り、大変残念だった。検討会議に出席していた神津里季生連合会長は労働者の代表として、席を蹴って退席すべきだった。賃上げせずに社会保障を支えることはできない。将来の社会保障を議論する会議で賃上げに消極的なのは趣旨に反するのではないか」
神津連合会長は検討会議の後、「凍結」の流れを批判し、十分な引き上げを求める発信を繰り返し行っている。山本議員の発言は連合がもっと強く抗議すべきだったという指摘だ。
●「基本的に同じ考え」
中小企業支援策についても踏み込んだ。最賃一元化議連の理論的支柱であるデービッド・アトキンソン小西美術工藝社社長は、日本経済の生産性を高めるには中小企業の規模を大きくすることが必要と説く。再編・統合を促す考え方だ。
山本議員はアトキンソン氏の主張と「基本的に同じ考えだ」と述べた。現行の中小企業保護政策は高度経済成長期には成功していたが、人口減少が続く現在は見直す必要があると話す。
「中小企業を小さいままで守るのではなく、大きくする方向で支援する。中小企業をつぶせと言っているのではない。中小企業基本法の定義(従業員数300人)を500人とし、その範囲で支援する。中小企業には大きく成長してもらいたい」
企業内の最低賃金を一定額以上引き上げ、設備投資などを行った場合に国が助成する業務改善助成金を使い勝手の良いものにすることや、「数年間にわたって直接支給する補助金」、社会保険料の減免なども考えていく必要があると述べた。
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