大阪市を廃止し四つの特別区を設けることの是非を問う住民投票が11月1日行われる。いわゆる「大阪都構想」だが、「大阪都」をつくるのではない。大きな自治機能を持つ政令指定都市をあえてなくし、財源と権限を大阪府に移す。その下で予想されるのが身近な暮らしに関わる住民サービスの低下だ。
【大阪市廃止の制度案と、住民投票決定までの経緯】
新たな制度案は、約270万人が住む大阪市を廃止して、東京23区のような特別区を四つつくる。府と市の「二重行政の解消」が主な理由。
大阪市廃止により、市が持っていた都市計画や港湾などの権限は、大阪府に移る。四つの特別区は、福祉など身近な暮らし向きの行政サービスを担う。
大阪市の一般財源8600億円の3分の2が大阪府に移る。特別区は国からの地方交付税(ほとんどの自治体に国から支給される運営費)を受けられない。財源不足となるため、府から「財政調整交付金」の給付を受けて運営する。
「都構想」をめぐっては、維新の橋下徹元代表が2011年の大阪府知事・市長のダブル選挙で「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」と公言し、翌年国政進出の際の政策では「統治機構改革」を筆頭に掲げた。
2015年の住民投票では、約1万票の僅差で否決され、橋下氏は政界引退を表明した。だが、19年の大阪府・市ダブル選挙で、現府知事と市長が当選したのを機に再度の住民投票に動き出す。新制度案は前回案を下敷きに、五つに分けるとしていた特別区を四つに変えた。前回反対だった公明党が賛成に転じた。
コロナ対応での露出増で吉村洋文知事の支持率が上がる中、再度の住民投票を決めた。現行法の下では、いったん廃止が決まれば後戻りはできない。
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