安倍前首相が退任間際になって、年内に結論を出すよう求めた「敵基地攻撃能力の保有」――。国是である専守防衛の大転換になるとして警鐘を鳴らす集会が9月29日、国会内で開かれた。識者らは東アジアでの軍拡競争を強めることになると指摘。軍事同盟ではなく、国連を中心にした軍縮協議を進める必要があると強調した。NGO関係者や研究者らでつくる集団的自衛権問題研究会の主催。
自民党は8月、北朝鮮の弾道ミサイルなどの脅威に対し「抑止力を向上する」として、他国のミサイル発射基地への攻撃能力保有の検討を提言している。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲氏は「専守防衛の範囲内と言いながら、前のめりに先制攻撃に走っていく危険性がある。地域の軍拡競争を助長する行為だ」と警告した。
この狙いについて、北朝鮮ではなく、米国との緊張関係を強めている中国へのけん制であると指摘。「中国、北朝鮮、ロシア、米国を含む全ての関係国が協議し、北東アジアの非核地帯を作り出すことが必要だ。そのためにも日本は専守防衛の変更と受け止められかねない政策をやめなければならない」と述べた。
国際法が専門の松井芳郎名古屋大学名誉教授は、自民党の提言に国連の集団安全保障についての言及がない点に注意を促した。軍事同盟による「抑止力の向上」に頼ることは、「19世紀的な勢力均衡政策への先祖返り」と批判した。
〈写真〉オンラインで講演した松井芳郎名古屋大学名誉教授は、先制攻撃を違法とする国連憲章をひもとき、敵基地攻撃能力保有の危うさを指摘した(9月29日、都内)
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