9月26日の核兵器廃絶日本NGO連絡会が主催したシンポジウムに、外務省の本清耕造軍縮不拡散・科学部長が参加し、自身の経験も踏まえて、核兵器廃絶への思いを語った。発言(要旨)を紹介する。(文責・編集部)
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最初に外交官として赴任した国がメキシコだった。核兵器の問題で言えば、トラテロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブにおける核兵器の禁止に関する条約、1968年発効)という、世界で最初に非核地帯条約を結ぶ舞台になった。メキシコの歴史をひもといてみると、ラテンアメリカが核戦争一歩手前のところまでいってしまったキューバ危機(ミサイル基地建設をめぐり米ソが激しく対立した事件、62年)の反省があるから、世界に先駆けて条約を作った。2014年にはナジャリット州で「核兵器の人道的影響に関する第2回国際会議」が開かれた。
メキシコをスターティングポイントにして、核兵器の問題を見てこれたことは、非常に勉強になったと思っている。その後、人権・人道関係の仕事や開発関係の仕事を担当した。
核兵器の問題は人間の安全保障を越えた本当の安全保障の問題。7月にこのポストに就いて、厳しい安全保障の環境において何ができるのか、真剣に考えてきた。さまざまな国や機関の担当者とビデオ会議で話し合っている。そこで必ず「新型コロナや自然災害の影響は大きいが、われわれが取り組んでいる核軍縮の問題、核兵器をなくすという仕事の重要性は一切変わらない」ことを確認し、同意を得ている。
●再検討会議の成功を
今、一番大切なのは核不拡散条約(NPT)再検討会議が実現した際には、絶対に成功させなければいけないことだ。前回(15年)は最終文書が採択されないまま終了した。2回続けて失敗するわけにはいかない。
そのために、日本政府として積極的に参画していく。政策担当者として日本の安全、国民の生命、財産を守るのが一番大切だということを念頭に置きながらやっていかなければいけない。そこは理解してほしい。
核兵器禁止条約については、政策担当者として核兵器廃絶がどれだけ難しいか実感している。政府としてはすぐに署名、批准できる状況にはない。この条約によって核兵器保有国が逃げてしまうと、NPT再検討会議は成功しないだろう。そこをうまくつなげられるようにがんばっていきたい。
●NGOの要請から
広島、長崎での被爆の記憶は絶対に残さなければならない。二度と繰り返してはいけないというメッセージを日本として発信し続ける。(最新技術によって)核兵器と通常兵器の境目がどんどんなくなっている。核兵器を使う「チャンス」も増えてしまうのではないか。法律的な枠組みを加えるなど、この問題についても取り組みたい。
以前、NGOの方たちから「日本も拷問等禁止条約に入ってほしい」との要請があり、法務省と話し合いを重ね、99年に加入した経験がある。このポストにいる間に、核兵器がなくなるための一歩が踏み出せたと言えるように、しっかり仕事に取り組んでいきたい。
〈写真〉自分の言葉で語る姿が印象的だった外務省の本清部長(9月26日、都内)
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