ノルウェーでバス労働者がストライキを決行中だ。賃上げをめぐる労使交渉が決裂し、国の調停も不調に終わったため、9月20日午前6時より、首都オスロなどノルウェー東部で3800人がストに突入した。労使の折衝は続いているが、進展がなければ組合側は26日から段階的にストを全国へ波及させる。
●争点は賃金格差の是正
交渉の争点は、広がる賃金格差の是正だ。製造業と比べた場合、2008年にはほぼ横並びだったバス労働者の賃金は、現在9%低い。年収は1950時間労働を基礎として、諸手当込みで44万2400クローネ(約496万円)だ。ここ数年の賃上げは物価上昇率も下回っている。
今年はさらに経営側がコロナ禍による運賃収入の減少を理由として、一層のコスト削減に固執しているため、組合側も態度を硬化させている。ノルウェーでバス労働者がストを打つのは22年ぶりとなる。
低賃金に加え、労働時間は長く不規則だ。1日の勤務に複数のシフトが入る「中抜き勤務」のため、いったん出勤すれば半日(12時間)以上帰宅できないこともある。無給の手待ち時間は、週20~25時間だ。この中抜き勤務は、1日最長12時間と労使合意しているが、経営側はこれを14時間に延長しようとしているため、組合側は強く反発している。
バス輸送は、市民に必要不可欠な公共サービスだと社会的に認識されているが、それに見合った賃金・労働条件が整備されておらず、若者が敬遠する職業となっている。このままでは定年退職者を補充できず、来年は千人の要員不足が生じる。
●進む労働強化
ノルウェーには、07年に締結した「バス産業協定」と呼ばれる中央協約がある。バス労働者の9割を組織する四つの関係労働組合と官民二つの経営者協会が、この協定に基づきバス労働者の賃金・労働条件を中央統一交渉で決定してきた。二つの経営者協会には、路線、都市間、貸切、スクールバスなどほぼ全てのバス事業者が加入しており、交渉の決定事項を履行する。
バス産業協定は、製造業並みの賃金確保を労使で目指すことを確認したはずだが、現実は逆のコースを歩んできた。自治体が競争入札で民間バス事業者を選定する制度が大きな要因だ。協定は、賃金を切り下げて競争することを禁じている。とはいえ、人員削減でトイレ休憩もままならないほど労働強化が進み、中抜き勤務が定着していった。
●職場は「我慢も限界」
「職場の労働者は我慢も限界だ」と訴えるのは、国鉄労組バス部会のフレディ・クルブリック代表である。国鉄バスの最高経営責任者は、ボーナスだけで現場労働者の年収に相当する額を得ており、年収が285万クローネ(約3210万円)に達することには、世論も批判的だ。
ナショナルセンターのノルウェー労働総同盟(LO)や看護師組合はさっそくスト支持を表明。ストを打って賃金・労働条件の向上を勝ち取ることが必要な時もあると、市民やマスコミも同情的だ。(国際運輸労連政策部長 浦田誠)
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