東京、埼玉、千葉の建設従事者と遺族が、建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんや中皮腫などを発症したとして、国と建材メーカーに謝罪と賠償を求めた東京訴訟2陣(原告121人)の判決が9月4日、東京地裁で言い渡され、国と建材メーカーの責任を認めた。建設アスベスト訴訟(集団訴訟)では国に対し「14連勝」。10月22日に行われる予定の最高裁上告審弁論の直前に出された判決として注目される。
判決は国に対し、アスベストを含む建材の屋外での加工作業で「遅くとも2002年1月1日以降」の責任を認めた。吹き付け作業や屋内での建材加工作業についても、それぞれ言及している。
建材メーカーについて共同不法行為としての責任を認めたのは、東京訴訟では1、2陣ともに初。
●補償基金制度創設を
今回の判決の原告のうち、112人は何らかの形で救済されたが、9人は認められなかった。その一人、田中更さん(77歳・吹き付け工、石綿肺と肺がんを発症)は記者会見でこう語った。
「当時は(発がん性の高い)青石綿を含んだ建材を吹き付けていた。2000年には肺を切除する手術もした。酒もたばこもやらない。ソフトボールと剣道が唯一の楽しみだったのに、今では歩くのがやっとで家では酸素吸入をしている。(こんな状態でも)認められず残念だ。石綿被害補償基金制度を創設するなど政治的な解決を切に願う」
東京訴訟弁護団の小野寺利孝団長は「国は14連敗し、連続して断罪された。これを真摯(しんし)に受け止めて最高裁判決を待たずに、政治的な解決を決断する状況ではないか。与野党を含めて『政治が何をすべきか』という動きが始まっている」と述べ、全面的な早期解決を訴えた。
〈写真〉「国に14連勝」との報告に、原告や支援者は弁護団の奮闘に感謝と連帯の拍手を送った(9月4日、東京地裁前)
〈写真〉判決で国と建材メーカーの責任が認められなかった原告の田中さん(左)は当時の仕事の状況を振り返り思いを語った(9月4日、東京地裁前)
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